働き方改革の鍵、「ワークシェアリング」とは?

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公開日:2018.1.9

ワークシェアリングとは、労働者1人あたりの労働時間を削減し、会社もしくは社会全体の雇用数を維持、増加させるという考え方のことを指します。欧米諸国では以前より広く普及しており、近年は日本においても働き方改革に伴って導入が進みつつあります。今回はそんなワークシェアリングについて、導入する目的やメリットなどを解説していきます。

ワークシェアリングとは

ワークシェアリングとはその名の通り、1つの仕事をそれまでよりも多い人数で分かち合うことを指す言葉であり、ワーキングシェアとも呼ばれます。

日本でワークシェアリングの考え方が広まり始めたのは近年になってからですが、ヨーロッパでは1980年代からワークシェアリングが行われていました。中でもオランダでは、1980年代前半にワークシェアリングが推進されるようになると、失業率が徐々に低下して経済危機を克服することに成功し、ワークシェアリングの成功事例として非常に有名になっています。

日本ではワークシェアリングはまだ普及しているとは言えませんが、働き方改革の一環として導入する企業も徐々に増えてきています。

 

ワークシェアリングを導入する目的

厚生労働省は、ワークシェアリングをその目的に応じて4つのタイプに分類しています。

雇用維持型(緊急避難型)

雇用維持型(緊急避難型)とは、何らかの理由で一時的に景況が悪化し、そのままでは人員削減をせざるを得ないという場合に、緊急避難的な措置として従業員1人あたりの所定内労働時間を短縮するというものです。これにより業務に必要な従業員の数が増えるため、社内でより多くの雇用を維持することが可能となります。

雇用維持型(中高年対応型)

雇用維持型(中高年対応型)とは、中高年層の雇用を確保することを目的として、中高年層の従業員を対象として従業員1人当たりの所定内労働時間を短縮するというものです。緊急避難型の雇用維持型と同様、こうすることで社内の雇用をより多く維持することができます。国内の企業では、定年の延長や定年後の再雇用などによる60歳以上の従業員の雇用延長対策としての取り組みが中心となっています。

雇用創出型

雇用創出型は、失業者に新たな就業機会を提供することを目的として、労働時間の短縮を行うことでより多くの雇用機会を創出しようとするものです。労働時間を短縮することによって労働者1人当たりの給与が低下したり、企業側の負担が増加したりすることが想定されるため、ヨーロッパ諸国ではワークシェアリングを行う企業に対して政府が助成金を与える制度も設けられています。

多様就業対応型

多様就業対応型は、正社員に対して短時間勤務を導入するなどして勤務の形態を多様化することで、より多くの労働者に雇用機会を与えるというものです。具体的な例として、均等待遇を実現してパートタイム労働へのシフトを推進し、女性や高齢者などの雇用機会を生みだしたオランダの事例などが挙げられます。

ワークシェアリングの目的は以上の4タイプに分類されますが、総じて大きな目標としているのは、従業員1人当たりの仕事量を減らすことで雇用を維持または創出する、つまり、より多くの雇用を促すことであると言えるでしょう。

 

ワークシェアリングのメリット

それでは、ワークシェアリングをすることにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

雇用が生まれる

ワークシェアリングの目的の項でもすでに触れましたが、社会全体で見たときのワークシェアリング導入の1番の効果は、それにより雇用が生まれることです。1人当たりの仕事量を減らすことで追加的な雇用が生まれるため、失業率を改善することにつながります。

多様な就業形態が実現

1人当たりの労働時間が削減されることは就業形態を多様化することにもつながります。その代表例がパートタイム労働の導入です。働きたい気持ちはあっても子育て中で仕事に充てる時間をなかなか確保できないという主婦層や、体力的に長時間の労働は難しいが短時間なら働きたいという高齢者層、親の介護などで仕事に充分な時間を確保できなくなってしまった社員などをパートタイムで雇用することが可能になるため、個々人の状況や希望に合わせた働き方がしやすくなります。企業側としても、多様な就業形態を可能にすることで、フルタイムで働けなくなったことを理由に優秀な人材の流出を防ぐことができるのであれば、それは大きなメリットであると言えます。

労働状況が改善される

近年、日本では過剰労働の社会問題が深刻化しています。長時間にわたる時間外労働が常態化しているような、いわゆるブラック企業も多く、過剰労働による過労死も問題となっています。

ワークシェアリングは、このような長時間労働などの劣悪な労働状況を改善することにもつながります。従業員1人当たりの仕事量を減らすことで過剰労働を防止して、職業生活と家庭生活の両立を促し、適切な労働環境を生み出せるのです。

生産性が向上する

1人当たりの労働時間を減らし労働状況を改善することには、生産性が向上するというメリットも存在します。長い時間ひたすらに仕事をするよりも、適度な休暇を挟みながら短時間で集中して働く方が、業務の効率が良くなります。個々の従業員の生産性が向上すれば企業全体としても活気があふれ、プラスの効果を生み出すでしょう。

経済効果を生み出す

ワークシェアリングを行うことによって経済効果も生まれると考えられています。従業員の労働時間が長ければ当然余暇の時間も少なくなってしまいますが、ワークシェアリングによって労働時間が短くなれば余暇の時間が増加し、より多くの時間を趣味などに費やせるようになります。結果として個人消費が促進され、景気を刺激することにつながります。また、余暇の時間を増えることは、少子化問題の解決にも効果が期待されています。

 

まとめ

ワークシェアリングを取り入れることによって、雇用が生まれるだけでなく、労働状況の改善、多様な就業形態の創出、優秀な人材の流出防止など様々なメリットがあり、経済効果も期待されます。日本ではまだあまり浸透していませんが、近年導入する企業も出てきているこのワークシェアリングの取り組み、ぜひ1度導入を検討されてみてはいかがでしょうか。

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