働き方改革の推進に伴い、時間や場所にとらわれず多様な働き方が可能となる「テレワーク」を導入する企業が増加しています。テレワークの導入には就業規則やツールの整備など多くの事前準備が必要となり、その準備が不十分であると様々な不都合が生じてしまう恐れがあります。今回は、これからテレワークを導入しようという企業に向けて、社内ルールづくりにおけるチェックポイントをまとめました。
テレワークとは、ICT(情報通信技術)の活用によって場所や時間にとらわれることのない働き方です。オフィスへの通勤をしなくても自宅やカフェで業務を行い、労働者のライフスタイルに合わせた時間で働くことが可能になります。こうした柔軟な働き方の実現により、通勤時間や交通費などのコスト削減、子育てと仕事の両立の支援、そして人材の確保などといった効果が期待されます。また、労働者が別々の場所で働くことで、例えばインフルエンザの社内での流行を予防できるなど、種々のリスクの低減につながることも考えられます。
その一方で、職場での勤務がなくなるために就業時間の把握が困難になることや、業務に必要な労働者の通信費を誰がどの程度負担するのかなど、様々な問題が発生する恐れもあります。そのため、テレワークを導入するには、労働の内容に応じてテレワークの形態を考え、またテレワークのための新たな規則や設備を設けることが必要となります。
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テレワークの導入後に整備が必要となる社内ルールには、次の事柄に関するものが考えられます。
労働基準法施行規則第5条第1項第1号の3における規定により、事業主は従業員の就業の場所を契約時に明示する必要があります。テレワークの導入に際しても、どこで労働を行うのかを明示しなくてはなりません。テレワークの労働場所は以下のように分類することができます。
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労働者の労働時間を適正に管理するために、労働時間の管理の方法を予め決めておく必要があります。管理の仕方には以下のようなものが挙げられます。
テレワークという形態で勤務する人と実際に出社して勤務する人では評価の方法を変えざるを得ない場合があります。その際には、必ずテレワークで仕事をする従業員に予め制度の説明をしなくてはなりません。
またテレワークに従事する従業員の評価は、出社して顔を合わせていない分難しくなることも考えられます。しかしテレワークという労働形態のみを理由に、出社している従業員との評価に差が生じるという事態は避けなくてはなりません。社員と多くコミュニケーションを取る方法を考えるなどの予防策も講じる必要があります。
テレワークは社外から通信することによって通信費が発生します。この通信費の負担を会社がするのか、それとも社員がするのかは予め決めておかなくてはなりません。また、通信費以外にも、書類作成時の用紙代や水道光熱費など、業務に付随して発生する諸費用の負担についても規則を設ける必要があります。
労働安全衛生法第3条は、事業者が快適な職場環境の実現と労働条件の改善により職場における労働者の安全と健康を守ることを義務付けています。
テレワークでは従業員が出社しないために労働環境の管理は難しくなりますが、適切な労働環境作りについて助言することで改善を促すことはできます。特にテレワークではPCやスマートフォンなどの電子機器を利用する業務が多くなるので、室内の明るさや換気、温度・湿度の管理、休憩の取り方についての助言が必要となるでしょう。さらに、在宅勤務やサテライトオフィス勤務をする場合、労働環境が固定化される点にも注意が必要です。
また、テレワークを実施する場合にも労働者の健康管理や労働者災害保険についての確認が必要となります。社外での労働に際して労働者が負傷、または疾病を罹患した場合は、それが私的な用事で発生したものではなく、業務を原因として発生したと認められる場合には労働者災害保険が適用されます。
テレワークを実際に導入するにあたって、テレワークの対象者となる従業員を選定する基準を設ける必要があります。業務内容に応じてテレワークを行うことが可能かどうかを判定し、また教育を必要とする新入社員は対象から外すなど工夫が求められます。
またテレワーク実施の前には、従業員にテレワークに関する知識を教育する必要もあります。その内容としては、テレワークの必要性や意義、労働管理用のツールの操作法、テレワーク実施者に適用される規則の説明などが考えられます。
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テレワークは従業員が各自のライフスタイルに合わせて労働することを可能にしてくれます。しかしその一方で、出社する従業員とは異なる労働条件で働くこととなるので、導入の前には制度面での準備を十分に行っておく必要があります。
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