【調査レポート:テレワークによる健康管理、新型コロナ対策の実態調査】昨年と比較して分かった、テレワークの進展と効率化のポイント

2021年2月2日~2月14日に行われた「テレワークによる健康管理、新型コロナ対策の実態調査」では、全国のバックオフィス従事者118人にテレワークでの健康管理の状況や新型コロナ対策に関するアンケートを行いました。
今回の調査と2020年7月に実施したアンケート結果を比較すると、興味深い結果が得られました。前回のアンケート実施時には、突然の緊急事態宣言の影響で、半ば強引なテレワーク導入を余儀なくされた企業も多くありました。現在は、準備の時間が十分に取れていることもあり、企業の状況に合わせてテレワークを適切に実施できていることができているようです。
今回は、アンケートの集計結果をもとにテレワーク実施状況の変化や健康管理と新型コロナ対策の実態について考察していきます。

回答者の属性

回答者の会社規模

回答者の役職

回答者の職種

 

2019、2020、2021年のテレワーク実施状況との比較

(テレワーク実施状況のアンケート結果 上:2019年 中:2020年 下:2021年)

前回のアンケート結果と比較すると、テレワークを全社導入していると答えた方の割合は53%から42%へと減少していました。減少の要因としては、都市部以外でのテレワーク全社実施率が減少したことや、一部のみ導入している企業が増加したことが挙げられます。
テレワークを導入したきっかけの68%が緊急事態宣言であったことや、2021年の緊急事態宣言下では宣言が発出されていない都道府県もあることを加味すると、それらの地域ではテレワークの全社導入をする必要がないと考えられているのではないでしょうか。

(テレワーク導入のきっかけのアンケート結果)

また、前回の緊急事態宣言時に得た教訓を生かし、テレワークの実施頻度や導入すべき職種とそうでない職種などが適正化されていることも考えられます。実際に、週5日以上テレワークを実施している企業は全体の24%と少なく、週2〜4日実施している企業が半数近くを占めていました。

(テレワーク実施頻度のアンケート結果)

テレワークを導入していない理由や課題

テレワーク導入していない理由として最も多かったのが「業務上テレワークができない」といった意見でしたが、次点で「環境が整っていない」ことが挙げられていました。
特にネットワークやセキュリティなどのサイバーインフラ、勤怠や成果の把握システムといったソフト面での課題が浮き彫りになりました。前者については、会社負担でネット回線やセキュリティソフトを導入すること、後者については適度にオンラインでコミュニケーションを取る機会をセッティングすることで改善が可能であると考えられます。
また、職種によってテレワークを実施できる社員とそうでない社員がいることで不満が生まれていることも分かりました。不平感を感じている社員へのフォローやモチベーションを高めるような環境構築が、今後重要になってくるでしょう。

 

会社規模別に見たテレワーク

テレワーク実施状況

テレワーク満足度

前回のアンケートではテレワーク実施状況と満足度は共に、会社規模に応じて高くなるといった結果でした。この結果は、会社規模が大きいほどテレワークの環境整備に予算や人員を多く割けることが背景にありました。
今回のアンケート結果は、前回とは反対の傾向が見られ、小規模の会社ほどテレワークの全社導入率と満足度が高くなりました。前回のアンケート時から月日を経たことで、規模の小さい会社でもテレワークへの準備を十分に行うことができたのではないでしょうか。
また、会社規模が大きくなるほど「仕事に集中できない、生産性が下がる」といった意見が多くなりました。規模の大きい会社では「仕事環境が整わない」といった意見も同時に増えているため、オフィスと同等の環境を自宅で構築できないことが不満となり、結果に現れていると考えられます。

(テレワーク満足度の前年度との比較)

次に、前回のアンケートとの比較という観点で見てみましょう。テレワークの満足度は、全体的に10%近く低下しています。前回のアンケート結果よりも「業務に集中できる」ことや「生産性があがった」ことを利点と考える人は減っており、そのことが満足度の低下につながっていると推察できます。
また、長期間テレワークを続けてきたことで身体やメンタルに問題が生じている可能性もあります。実際に、運動不足や身体の痛み、コミュニケーション不足などを指摘する意見も挙がっており、会社が主体となってこれらを改善に取り組む必要があります。定期的にオンラインランチ会を開催したり、福利厚生の一環としてオンラインで体操のレッスンを受講するサービスを取り入れてみたりしてはいかがでしょうか。

 

役職・職種別にみたテレワーク

役職別のテレワーク満足度

職種別のテレワーク満足度

次に役職や職種別の切り口でテレワークの現状について考察していきます。
前回のアンケートでは、役職が上がるほどテレワークの満足度が高くなっており、今回もほぼ同様の傾向が見られます。ただ、経営者・役員の満足度は前回と比べて向上しています。進捗や成果の不透明さに不満を感じている管理職と比較して、経営者・役員は社員の安全を守るという観点で満足に感じているのではないでしょうか。

職種別の観点では、総務や経理、人事などのバックオフィス担当者の満足度が低下していることが分かりました。この要因の一つとして、ハンコ文化・紙文化が未だに根付いていることが考えられます。業務フローに紙やハンコでのチェックが入る場合、「オフィスに行かないとバックオフィス業務ができない」といった事態が発生してしまいます。こうした状況下で、職種によってテレワークの実施状況に差がある場合、バックオフィス担当者は不公平に感じてしまうことでしょう。
脱ハンコやペーパーレス化は業務改善や無駄削減につながるため、まだ実施していない企業の方は取り組んでみてください。

新型コロナ対策の状況

感染を防ぐ取り組み

新型コロナ対策の実施状況は前回のアンケート時よりも良い方向へと向かっており、「全社実施している」との回答は74%にまでのぼりました。

(会社規模別:新型コロナ対策実施状況)

新型コロナ対策が拡大していることの最大の要因は、小規模の会社でも新型コロナ対策が進められるようになったことです。前回のアンケートでは、10人未満の会社において「全社実施している」と回答した方の割合は43%に過ぎませんでしたが、今回は71%もの方がそのように回答しました。「体温報告」、「罹患報告」、「出社履歴管理」などは手軽に導入できることから、どの規模の会社においても多く回答に見受けられました。

また、新型コロナ対策が必須になってからしばらく経過したことで、対策方法も多様化してきました。今回のアンケートでは、前回にはなかった、このような例が見られました。

  • 出張の事前許可申請
  • 訪問者の体温報告と訪問履歴の管理
  • 非接触除菌機と加湿器の導入
  • 消毒液の配布
  • デスク間に透明板を設置

いずれも手間がかからずに導入できる対策ですので、実践してみてはいかがでしょうか。

感染状況の管理

感染状況の管理方法として多く取り入れられていたのが「問診」でした。導入が簡単であるにもかかわらず、体調不良の社員をすぐに把握できたり、心のケアにつながったりすることから多くの会社で導入されているのでしょう。
一方で、感染者との接触を追跡するような取り組みは、規模によって導入度合いが異なりました。例えば、感染者の接触情報や社員同士の接触記録などは中規模の会社でしか進められていない、という結果になっています。これは、社員数が多いと追跡が難しく、小規模だと人員が足りないことで導入が困難になるからではないかと推測できます。書面での記録や口頭での確認で接触の追跡を行うと手間がかかってしまうため、自動で接触管理をするようなシステムを導入しましょう。

陽性者確認時の懸念

陽性者が発生した際のプロセスについて定めていない場合、感染者の追跡や保健所への連絡、各種書類の作成、従業員への連絡、業務の調整などをスムーズに行えず、業務に支障をきたしてしまいます。アンケートでは実際に、「ある役職の人が陽性になった場合、ほとんどの業務に影響が出る」、「社内に濃厚接触者が出た場合に、業務が遂行できなくなるリスクがある」などの回答がありました。
どの社員が陽性になっても冷静に対処できるよう、陽性者や濃厚接触者が出た場合のプロセスについてあらかじめ話し合い、社員に周知するようにしましょう。
また、陽性者のメンタルケアも非常に重要です。日々の問診で体調に不安がある社員がいた場合、欠かさずコミュニケーションをすることでメンタル面でのサポートをしましょう。

 

まとめ

コロナ禍が始まってから随分と時間が経ち、従業員の価値観や働き方に大きな変容が見られています。
そうした変革の中で企業が求められていることは、従業員が安心して健康に働ける環境を構築することと、その環境下で業務を効率的に遂行するためのサポートをすることの二つが考えられます。
特に、イレギュラーな日々が続くことで、従業員の心の健康が損なわれる可能性があるため、健康管理や労働時間管理、メンタルケアをしっかりと行えるよう、管理ツールを導入するなどして対策しましょう。

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