2020年7月21日~7月30日に行われた「テレワークによるコミュニケーション/健康管理の実態調査」では、全国のバックオフィス従事者128人にテレワークや健康経営に関するアンケートを行いました。
テレワークに関する調査では、2019年10月に実施したアンケート結果と比較し、大きな違いが見られました。その背景として、働き方改革の取り組みによる効果と新型コロナウイルスの影響が想定されます。今回は、アンケートの集計結果をもとにテレワークや健康経営の現状を考察していきます。
目次
前回のアンケート結果と比較すると、テレワークを全社導入していると答えた方の割合は7%から53%へと大きく上昇しました。特に、導入に前向きな方の割合は46%から89%まで増えており、テレワークへの理解が増していることが伺えます。
テレワークの導入が一気に進んだ背景の一つに新型コロナウイルスの感染拡大が挙げられます。2019年の結果では「導入の予定はない」と回答していた割合が28%と最多でしたが、2020年ではわずか3%に減少しました。これは、社員の安全確保が最優先事項となったことで急遽テレワークを導入、もしくは前向きに検討を始めた会社が多いと推測されます。
一方、コロナ以前から導入を実施、もしくは検討していた方も全体の32%いることから、2020年4月より施行となった働き方改革に向けて導入を進めていた会社の成果も十分にあったと考えられるでしょう。
今回のアンケートでは、「業務上テレワークができないこと」が最も多い理由となっていて、テレワークを導入していない理由の43%を占めました。従来からテレワーク推進上の課題として挙がってくる環境面や経営層の理解浸透に加え、業務遂行に欠かせないセキュリティ確保・設備の面でオフィス以外での勤務が困難という問題点が浮き彫りになった結果といえます。
テレワークの実施状況と満足度のどちらにおいても、会社規模が大きくなればなるほど高まる傾向が読み取れました。実は、テレワークで実感した利点や懸念点も会社規模によって異なっており、両者の回答から相関関係を見出せます。
会社規模が大きいと、テレワークの主な利点として「生産性が上がること」と回答した方が目立ちました。一方、規模が小さい会社ではテレワークの懸念点として「生産性が下がること」や「仕事に集中できないこと」、「コミュニケーションが取りにくくなったこと」といった声が多く挙がりました。したがって、テレワークを行う環境整備に予算をしっかりかけられるか、推進のための体制構築ができているかどうかが満足度を左右するポイントになるのではないでしょうか。特に中小規模の会社では、情報通信システムを活用して業務の効率化を行うことが、テレワークの質を向上させるための必須事項であると考えられます。
また、どの規模の会社でもテレワークの懸念点として「運動不足」を挙げていました。健康経営の観点でも、テレワークを導入している会社は外部講師を呼んでオンラインエクササイズイベントを開催するなどして、運動を呼びかける取り組みを行うもの良いかもしれません。
次に役職や職種別の切り口でテレワークの現状について考察していきます。
テレワークの満足度は役職が上がるほど低くなり、経営者・役員では「やや不満」と答えた割合が20%を超えました。経営者と管理職はどちらも一般社員に比べて満足度がそれほど高くありませんが、その理由はそれぞれで少し異なります。経営者目線では、生産性の低下といった会社の売り上げに直結する部分に課題を感じており、管理職はコミュニケーションが取れないことによる進捗管理の難しさを課題に挙げていました。
職種別に見ると総務や経営企画、会社役員の満足度は低い傾向にあります。テレワークの導入を進める立場としては、まだまだ課題が山積みであることの現れでしょう。
テレワークを導入していない理由として「経営層の理解がないこと」や「導入しても利用されないと考えていること」といった回答が見受けられます。しかし、調査結果より利用者視点でのテレワークのニーズは高いことが明らかになっています。まずは、テレワークを導入する側と利用する側との間にある認識の齟齬をなくすことが重要でしょう。
テレワークを導入した会社のうち、新型コロナウイルスの影響でテレワークを始めたと答えた方の割合は62%にまで及びました。このことから、多くの会社においてテレワークを導入するための準備期間が十分ではなかったことが推測できます。
テレワークの準備期間が短かったことによる弊害は、テレワーク前後におけるコミュニケーションの変化にも如実に現れていました。全回答者の3割近くがテレワークでのコミュニケーションに不満を抱いており、テレワークを継続する上では改善が急がれる課題といっても差し支えないでしょう。
しかし、「コミュニケーションが取りにくくなった」と答えた一般社員の割合は少なく、経営者・役員で「不満」と回答した数の半分程度にとどまりました。このことから、トップダウンよりもボトムアップのコミュニケーションの方がテレワーク向きの形式であることが考えられます。
テレワークを導入するにあたって、多くの会社がコミュニケーションを円滑化するための工夫を凝らしていることがわかりました。集まった回答の中からいくつか紹介していきます。
これらをまとめると、以下の3点がテレワークにおいてコミュニケーションを円滑化させるために重要であると考えられます。
また、テレワークを行う上で使用しているコミュニケーションツールについて以下のようなツールが挙げられていましたので、ぜひ参考にしてみてください。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響に伴い、従業員の健康管理を実施しているかどうかを尋ねてみました。すると、「全社実施している」「一部実施している」を合わせると60%の企業が健康管理を実施していると回答しました。5,000人を超える大きな規模の会社では従業員の健康管理が徹底されている傾向が見られ、全社実施をしていると答えた方の割合だけで85%に及びました。一方で、500人以下の規模の会社では、健康管理を少しでも実施していると答えた方の割合はおよそ50%にとどまりました。
健康管理をしていない理由としては「手順がわからないこと」や「導入の余裕がないこと」、「必要性が感じられないこと」などが挙げられました。さらに、小さな規模の会社だと「実施していたが中止した」と答えている割合も一定数確認され、人員やコストの面で実施が難しい現状があるのではないかと考えられます。アプリを利用して体温管理と報告を促すなどして、低コストかつ手軽に健康状態を把握できるような工夫を凝らす必要があります。
さらに、健康管理実施の有無は業種や地域の観点で見ても大きな差が確認できました。特に製造業や卸売業などでは実施率が低く、「実施の余裕がないこと」が課題となっています。また、東京と大阪の2大都市では実施率が比較的低くなっており、テレワークを実施していることで、体温測定と報告が必ずしも必要ではないと考えているのではないかと推測されます。
コロナ対策の実施有無は、「全社実施している」「一部実施している」を合わせると86%にのぼりました。また、明らかに会社規模と対応していて、5,000人以上の会社では全ての方が「全社実施している」と答えました。対策の内容も会社規模が大きくなるほど豊富になっており、以下のような事例が挙げられました。
これらの中には規模の小さい会社でも簡単に実施できる項目もあるため、検討してみてはいかがでしょうか。
また業種別にコロナ対策を見ると、「コロナ対策を実施する予定はない」と答えた方の8割が小さい規模の会社の総務担当者と役員でした。このように答えた方の所属する会社はすべてテレワークを実施していましたが、その上でさらにコロナ対策を同時並行で進めることは予算や人員の面で難しいという現状が読み取れます。テレワーク下でも体温報告を徹底するなどして、コロナ対策を進める必要があると感じられました。
新型コロナウイルス感染症の影響で、図らずもテレワークの導入が一気に進むこととなり、結果的に働き方改革が促進されたといえるでしょう。 テレワークの満足度調査では55%が「満足」との回答でしたが、依然として「どちらともいえない」が38%と多いため、今後はこれまでに明らかになったテレワークの課題を解決し、利点を最大化していくフェーズに入っていきます。まずはテレワークを導入する側と利用する側の間にある認識の齟齬をなくし、より良いテレワークの運用方針を策定するために、テレワークの良かった点・悪かった点を社内で共有するところから始めてみましょう。
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