取引先の接待のため飲み会等を行った場合、その費用は「交際費」となります。交際費は原則として全額が損金不算入とされますが、交際費のうち飲食等に要する費用(接待飲食費)の50%に相当する金額が損金算入可能であるほか、中小企業は50%の損金算入と800万円の定額控除との選択適用ができるなどの特例措置があります。
今回は、交際費の範囲や損金算入のルールについて解説します。
目次
交際費と接待飲食費
交際費とは
交際費とは、法人が得意先、仕入先、その他事業に関係する人などに対して接待・贈答などを行う際に支出する費用のことを指し、具体的には飲食店での飲食、旅行や観劇などへの招待、慶弔や禍福の際の支出、お中元やお歳暮などの費用が含まれます。つまり、「仕事上関わりのある人に対する接待の費用」といったイメージです。
接待飲食費とは
交際費のうち、社内飲食費を除く飲食費で、帳簿書類で飲食費と明らかにされているものを接待飲食費と呼びます。具体的には、以下のものが含まれます。
- 自社の従業員などが得意先を接待して飲食するための飲食代
- 飲食等のために支払うテーブルチャージ料やサービス料
- 飲食等のために支払う会場費
- 得意先の業務や行事などの際に弁当の差し入れを行うための弁当代
- 飲食店での飲食後、その飲食店でのお土産の持ち帰りにかかるお土産代
なお、ゴルフや観劇、旅行などの際の飲食費や、接待を行う飲食店などに得意先を送迎するために支払う送迎費、お中元・お歳暮などは飲食に関係していても接待飲食費とはならないため、注意が必要です。
損金算入のルールについて
接待飲食費の50%は損金算入が可能
2014年3月31日に公布された所得税法等の一部を改正する法律により、法人の交際費等の損金不算入制度に関する規定が改正されました。その結果、中小法人以外の法人に関して、これまで交際費等は原則として全額が損金不算入となっていましたが、接待飲食費の50%に相当する金額は損金の額に算入されることになりました。
中小法人に対する特例措置
一方、中小法人に関しては、これまでは交際費等のうち年間800万(定額控除限度額)までの金額が損金算入可能でしたが、2014年度の税制改正以降、以下のいずれかを選択して適用することができるようになりました。
- 年間800万円(定額控除限度額)までの損金算入
- 接待飲食費の50%にあたる金額の損金算入
なお、中小法人とは、事業年度終了の日の資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人のことをいいます。
損金算入の金額が増えれば法人税の軽減につながりますが、どちらの選択が有利となるかは接待飲食費の額によって異なってきます。
接待飲食費が2000万円の法人の場合
接待飲食費の額の50%の損金算入を選択すると損金算入は2000万×0.5=1000万円となります。定額控除限度額までの損金算入を選択した場合、損金算入は800万円ですので、「接待飲食費の額の50%の損金算入」を選択した方が有利です。
接待飲食費が1000万円の法人の場合
接待飲食費の額の50%の損金算入を選択すると損金算入は1000万×0.5=500万円となります。定額控除限度額までの損金算入を選択すると損金算入は800万円ですので、この場合は「定額控除限度額までの損金算入」を選択した方が有利です。
接待飲食費が1600万円を超える場合は「接待飲食費の額の50%の損金算入」、1600万円より少ない場合は「定額控除限度額までの損金算入」を選択すると、損金算入の額がより大きくなります。どちらを選択するかは、1600万円を基準に判断するようにしましょう。
交際費の例外規定
交際費に関して、接待飲食費のうち1人あたりの金額が5000円以下の費用は交際費から除外できるという例外規定が存在します。除外された接待飲食費は、会議費などとして処理されることになります。
定額控除限度額までの損金算入が適用されている場合、800万円を超えた部分の交際費は損金不算入になってしまうため、1人あたり5000円以下の接待飲食費は交際費から除外した方が節税対策として有効です。
なお、1人あたり5000円以下の接待飲食費とは、1人あたりの平均金額が5000円以下ということを意味するため、5000円を超えて飲食している人がいたとしても、平均が5000円以下であれば交際費から除外することができます。
この例外規定の適用には、以下の事項を記載した書類が必要となりますので、レシートや領収書などに参加者の氏名や人数を記載して保存しておくようにしましょう。
- 飲食等があった年月日
- 飲食等に参加した得意先等の氏名または名称、及びその関係
- 飲食等に参加した人数
- その費用の金額と飲食店の名称・所在地
- その他飲食費であると明らかにするために必要な事項
個人事業主の場合
ここまで解説してきた損金算入やその例外規定に関するルールは法人に対して適用されるものであり、個人事業主の場合、上限なく交際費を損金算入することができます。
ただし、交際費の定義にあてはまらないような場合は否認されてしまうため、税務調査の際に交際費であることを明らかにできるようにしておくことが必要です。
間違えやすいケース
最後に、交際費に関して間違えやすいケースについて紹介します。
自社主催の懇親会で得意先を会場へ案内する際のタクシー代
自社主催の懇親会で得意先を会場へ案内する際のタクシー代は、得意先に対して自社が接待をするための費用であるため、旅費交通費ではなく交際費に該当することになります。
一方で、他社主催の懇親会へ自社の社員を出席させる際のタクシー代については、旅費交通費として損金算入することが可能です。
別の飲食店で2次会を行った場合の1人あたりの接待飲食費
1次会終了後に別の飲食店において2次会を行った場合、それぞれの飲食店ごとに1人あたりの接待飲食費を計算することが認められます。
ただし、同じ飲食店にて行われた飲食等の場合は一体の行為とみなされるため、合計額について1人あたりの金額を計算することになります。
まとめ
経理担当者にとって、交際費の範囲や損金算入ルールをきちんと把握し、適切に処理することは欠かせません。
中小企業の場合、接待飲食費の50%の損金算入か定額控除限度額までの損金算入かを選択することができますので、接待飲食費の額を把握したうえで、どちらを適用するか定期的に見直してみるとよいでしょう。