近年、目にすることの多くなった時短勤務制度は、育児・介護休業法の規定により、男女を問わず希望者にその取得を認めることが事業主に義務付けられており、3歳未満の子供を育てている場合に取得が可能です。この制度を利用すると給料は減ってしまうのが通常ですが、キャリアの継続と子育てを両立するための選択肢として取得を考える労働者が年々増加しています。今回はそんな時短勤務制度について、取得の要件とメリット・デメリットについて解説します。
時短勤務制度とは
時短勤務制度の概要
育児・介護休業法の第23条第1項の「所定労働時間の短縮措置」は、一般に時短勤務制度と呼ばれています。時短勤務制度はかつて各企業の努力義務とされた勤務時間短縮の措置のうちの選択肢のひとつでしたが、平成21年6月の法改正により、単独として制度化することが義務づけられました。その結果、現在では就業規則等において時短勤務制度が明文化されていることが必須となっています。
時短勤務制度の内容は以下の通りです。
- 1日の所定労働時間を、原則として6時間とする措置を含むものとしなければなりません。
- 原則として6時間とは、1日5時間45分から6時間までを許容するということです。
- 1日の所定労働時間を6時間とする処置を設けた上で、その他の所定労働時間短縮の措置を設けることは認められています(所定労働時間を7時間とする措置や隔日勤務など)。
- 時短勤務制度の使用を申し出たことや制度の適用を受けたことを理由に減給や解雇などの不利益な取り扱いをすることは禁止されています。
- 時短勤務制度を利用することで減った所定労働時間に対して、会社は賃金を払う必要はありません。ただし、短縮された時間を超えて、賃金を減らすことは不利益な取り扱いとなります。
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時短勤務制度の手続き方法
時短勤務制度の手続き方法は、基本的に会社が定めることができます。労働者に対して過度な負担を求めることないよう、育児・介護休業法の他の制度を参考にしつつ、適切に作成する必要があります。
例えば、時短勤務制度の適用を受けるためには1ヶ月前には会社に申し出なければならないとすることは、育児休業でも認められているため許容されます。しかし、時短勤務制度の適用期間を1ヶ月単位とすることは、他の育児・介護休業法の制度では労働者の申し出た期間で取得できることを考慮すると不適切であると言えます。
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時短勤務制度の対象
育児・介護休業法の規定によると、時短勤務制度の対象となるのは次のすべてに該当する労働者です。
- 3歳未満の子を育てている労働者
- 1日の所定労働時間が6時間以内でない労働者(変形労働時間制を適用している場合は、すべての所定労働時間が6時間以内である必要があり、平均した1日の所定労働時間が6時間というわけではありません)
- 日々雇用される人でないこと
- 時短勤務制度が適用される期間に現に育児休業をしていない労働者
なお、上の条件を満たしていても次の3条件のいずれかに該当する労働者に関しては、労使協定により時短勤務制度の対象外とすることができます。
- 事業主に継続して雇用された期間が1年に満たない労働者
- 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
- 業務の性質、実施体制に照らして、時短勤務制度を講ずることが困難だと認められる業務に従事する労働者
このうち、特に3点目の理由により時短勤務制度の適用を除外された労働者に対しては、事業主は次のいずれかの代替措置を取ることを求められます。
- フレックスタイム制度
- 始業・終業時刻の繰り上げ、繰り下げ
- 事業所内保育施設の設置、運営またはこれに準ずる便宜の供与
- 育児休業に関する制度に準ずる措置
時短勤務制度のメリット
- 仕事と育児の両立
時短勤務制度を活用することで帰宅後に時間の余裕が生まれ、ご飯を作り、子供と遊ぶ時間を増やすことができます。また、親の帰宅時間が早くなることで、子供の就寝時間が早くなり、子供の健康にも良いでしょう。
- キャリアを継続できる
産後休業ないし育児休業の後、直ちにフルタイムでの勤務へ戻ることが求められた労働者は、育児との両立に挫折してしまう確率が高まります。しかし時短勤務制度を使うことで柔軟な働き方が可能となり、キャリア復帰もしやすくなります。企業としても、とりわけ女性労働者の退職者を減らすことが期待されます。
- 年金受給額が減らない
勤務時間が短くなると、厚生年金保険料が下がり将来の年金受給額も減ってしまいます。しかし、育児・介護休業法で定められた時短勤務制度を利用した場合には、特例措置として減給する前の給与を元に厚生年金保険料を払っているとみなされ、年金受給額は変わりません。つまり、実際に払っている厚生年金保険料より、多く払っているとみなされます。
時短勤務制度のデメリット
- 収入が減る
時短勤務制度の利用により減った分の所定労働時間に対して、企業は賃金を支払う義務はありません。
- 仕事量が減る
時短勤務制度を利用すると所定労働時間が減るため、その分だけ仕事量も減ります。そのため、周囲の同僚に協同してもらいながら仕事を進めることが必要となり、場合によっては業務の内容が変わる可能性もあります。その結果、仕事に対するモチベーションが低下してしまうことも考えられます。
- コストがかかる
時短勤務制度を利用すると、今まで、その女性がやっていた仕事の一部を代わりに担う労働者が必要です。その人員確保や引継ぎ作業には当然ながら相応のコストがかかってしまいます。また、フルタイムで働く同僚が不公平感を抱かないための対処を、事業主と利用者の双方が配慮することが望ましいです。
まとめ
時短勤務制度は仕事と子育ての両立をサポートしてくれます。育児により時間を割きたい労働者は、この制度をうまく利用することでキャリアを諦めることなく仕事復帰がしやすくなります。また会社としても人材を失わずに済むため、この時短勤務制度をより多くの労働者が使えるよう、周知を徹底していくと良いでしょう。