11月は、「過労死等防止啓発月間」です。仕事と生活の調和を図り、健康で充実して働き続けることのできる社会を実現するため、各企業においても長時間労働の削減などにより過労死等の防止に主体的に取り組んでいく必要があります。
今回は、過労死等防止啓発月間の取組内容や、過重労働解消のために企業が行うべき対策について解説します。
目次
過労死等防止啓発月間とは
2014年6月に成立した「過労死等防止対策推進法」では、国民の間に広く過労死等を防止することの重要性について自覚を促し、これに対する関心と理解を深めるため、毎年11月を「過労死等防止啓発月間」と定めています。
このため、厚生労働省では同月間中に、過労死とその防止について考える「過労死等防止対策推進シンポジウム」や、過重労働解消に向けた集中的な周知・啓発を行う「過重労働解消キャンペーン」などにより、過労死等の防止に向けた取組を行うこととしています。
過労死等の定義
過労死等防止対策推進法では、「過労死等」について、下記のとおり定義しています。
・業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡
・業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
・死亡には至らないが、これらの脳血管疾患・心臓疾患、精神障害
過労死等を引き起こす要因としては様々なものがありますが、とりわけ長時間労働は脳・心疾患との関連性が強いという医学的知見が得られています。長時間労働を削減し、仕事と生活の調和を図ることは、国にとっても企業にとっても喫緊の課題となっています。
過労死等防止啓発月間の取組内容
厚生労働省では、過労死等防止啓発月間中に、「過労死等防止対策推進シンポジウム」や「過重労働解消キャンペーン」などの取組を行い、過労死等防止のための周知・啓発を行うこととしています。
(1)過労死等防止対策推進シンポジウム
過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会の実現に向け、過労死とその防止について考えるシンポジウムを、過労死等防止啓発月間を中心とした期間に開催します。今年度は全国43か所でシンポジウムが開催され、大学教授や医師、弁護士等の専門家による講演や、過労死遺族による体験談の発表などが行われる予定です。
(2)過重労働解消キャンペーン
過労死等の一つの要因である長時間労働の削減など、過重労働解消に向けた集中的な周知・啓発等の取組を行う「過重労働解消キャンペーン」を行います。具体的には、下記の6つの取組が行われます。
①労使の主体的な取り組みの促進
厚生労働省労働基準局長が、使用者団体や労働組合に対し、長時間労働削減に向けた取組に関する周知・啓発などの実施について、厚生労働大臣名による協力要請を行い、労使の主体的な取組を促します。
②労働局長によるベストプラクティス企業への職場訪問の実施
各都道府県の労働局長が、長時間労働削減に向けた積極的な取組を行っている企業を訪問し、取組事例を報道等により地域に紹介します。
③重点監督の実施
長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場や、離職率が極端に高いなど若者の使い捨てが疑われる企業に対して、労働基準監督署による重点監督を実施します。重点的に確認される事項は下記のとおりです。
・時間外・休日労働が36協定の範囲内であるか
・賃金不払残業が行われていないか
・労働時間管理が適切に行われているか
・長時間労働者に対して、医師による面談指導等、健康確保措置が確実に講じられているか
労働基準監督署の調査については、下記の記事も参考にしてみてください
・労働基準監督署って、どこを見るの? 労基署調査、徹底攻略!
https://www.somu-lier.jp/goodstory/labor-standards-supervision/
④電話相談の実施
フリーダイヤルによる全国一斉の「過重労働解消相談ダイヤル」を実施し、労働者からの相談に対する指導・助言を行います。
⑤周知・啓発の実施
リーフレットの配布、広報誌、ホームページの活用により、キャンペーンの趣旨などについて広く国民に周知を図ります。
⑥過重労働解消のためのセミナーの開催
企業における自主的な過重労働防止対策を推進するため、過重労働解消のためのセミナーを全国で開催します。過重労働解消によるメリットや企業が陥りがちな違法行為について、具体的な取組事例を盛り込みながら詳しく解説します。
過労死等防止のため、企業は何をするべき?
過労死等を防止し、健康で充実して働き続けることのできる社会を実現するため、企業においても労働環境の改善や長時間労働の削減等を行っていく必要があります。以下のような観点に留意しつつ、主体的に取組を進めていくようにしましょう。
(1)時間外・休日労働時間の削減
時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)で定める延長時間は、限度基準に適合したものとする必要があるので、今一度確認するようにしましょう。また、特別条項付き協定により月45時間を超える時間外労働が可能な場合にも、実際の時間外労働は月45時間以下とするように努めましょう。休日労働についても、削減に努めることが重要です。
(2)年次有給休暇の取得促進
年次有給休暇を取得しやすい職場環境づくりや計画的付与制度の活用などにより、年次有給休暇の取得促進を図りましょう。
(3)労働者の健康管理に係る措置の徹底
健康管理体制を整備するとともに、健康診断を着実に実施するようにしましょう。また、長時間にわたる時間外・休日労働を行った従業員に対しては、医師による面接指導等を実施し、心身の状況を把握するようにしましょう。
このような取組を行うためには、労働時間の適正な把握が欠かせません。勤怠管理システムなどのツールをうまく活用しながら労働時間を正確かつ効率的に把握し、長時間労働の削減に取り組んでいくようにしましょう。
まとめ
過労死等を防止するためには、社員全員が過労死等を防止することの重要性について理解を深め、長時間労働の削減に取り組んでいく必要があります。過労死等防止啓発月間の期間を利用して、ぜひ全社的な取組を進めるようにしましょう。