企業が労働者を雇用するにあたっては、労働基準法等の労働関係法令を遵守することが必要不可欠です。somu-lierではこれまで、企業が労働者を雇用する際のルールについて多数紹介してきましたので、ここで一度おさらいをしてみましょう。
今回は、企業が守るべき労働関係制度をまとめて紹介します。
賃金とは、使用者が労働者に対して、労動の対象として支払うすべてのものをいいます。賃金は、通貨で、全額を、毎月1回以上、一定の期日に、直接労働者に支払うことが原則です。ただし、例えば社内預金制度や財形貯蓄制度を活用する場合は労使協定の締結によって賃金の一部控除ができるようになるなど、一定の例外も存在します。
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最低賃金制度とは、最低賃金法に基づいて国が賃金の最低額を定め、使用者はその最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度です。
仮に最低賃金を下回る賃金を労使間で合意して定めた場合、最低賃金法によりこの合意は無効とされ、最低賃金額と同額の賃金を定めたものとされます。したがって、使用者が労働者に対して最低賃金額未満の賃金しか支払わなかった場合には、使用者は最低賃金額との差額分を支払わなければなりません。
最低賃金は、月給制や歩合制の労働者にも適用されます。給与が最低賃金額を満たしているかどうかの確認方法は、下記の記事で詳しく解説していますので、参照してください。
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時間外や深夜(原則として午後10時〜午前5時)に労働者を労働させた場合、1時間当たりの賃金の2割5分以上、法定休日に労働させた場合には1時間当たりの賃金の3割5分以上の割増賃金を支払わなければなりません。
また、1ヶ月に60時間を超える時間外労働については、企業の規模に関わらず5割以上の割増率で割増賃金を支払わなければなりません(ただし、中小企業についてはこの適用が猶予されています)。
割増賃金の計算においては、基本給とすべての手当を計算の基礎に含めなければなりませんが、計算の基礎から除外できる手当も存在します。割増賃金の計算方法は、下記の記事で詳しく解説していますので、参照してください。
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労働基準法では、女性や年少者について、様々な保護規定を設けています。
女性労働者については、母性保護の観点から、以下のような保護規定が存在します。
「育児時間」とは、1歳未満の子供を育てる女性労働者が請求した場合に、1日2回、それぞれ少なくとも30分、育児のための時間を与えなければならないという制度です。育児時間については下記の記事で詳しく解説していますので、参照してください。
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満18歳に満たない者(年少者)の労働については、以下のような保護規定が存在します。
労働者の意思表示による退職については、労働基準法上は何も規定がありません。したがって、退職については就業規則等の規定に従うことになりますが、定めがない場合には、民法によりその意思表示から2週間で効力を生じることになります。
ただし、月給制のように賃金が期間をもって定められている労働者は、次期以降の退職について、当期の前半に申し入れることが必要です。例えば、賃金計算期間を毎月1日〜末日としている場合で、9月30日に退職したい場合には、9月15日までに申し入れることとされています。
また、労働者が退職後に、使用期間や業務の種類、賃金について証明書を請求したときには、使用者は遅滞なく交付しなければなりません。ただし、労働者の請求しない事項を記入してはならないとされています。
定年とは、労働者がその年令に達したときに自動的に労働契約が終了する制度のことをいいます。高年齢者雇用安定法では、定年について以下のとおり定め、企業に「高年齢者雇用確保措置」を義務づけています。
高年齢者雇用確保措置の内容や、企業において高年齢者を活用するにあたってのポイントは、下記の記事で解説していますので参照してください。
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解雇とは、使用者の一方的な意思表示により労働契約を終了させることをいいます。解雇は労働者の生活に多大な影響を及ぼすことから、解雇事由や解雇手続きについては様々な規制が設けられており、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合、解雇は無効となります。
解雇に関する法的規制や解雇にあたって必要な手続きについては下記の記事で詳しく解説していますので、参照してください。
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就業規則とは、就業時間や賃金、退職に関する事項等について総合的にまとめたものであり、常時10人以上の労働者を使用している事業場では必ず作成しなければなりません。また、作成した就業規則は、労働者代表の意見を聴き、その意見書を添付して、所轄の労働基準監督署長に届け出ることが必要です。
就業規則の作成方法については、下記のURLからダウンロードできる「お役立ち資料」で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
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労働安全衛生法は、企業に対し、労働者に対して医師による健康診断を実施しなければならないことを定めています。労働者を雇用する際には「雇入時健康診断」を実施することが必要であるほか、1年に1度、「定期健康診断」を必ず実施しなければなりません。
また、定期健康診断において脳・心臓疾患に関連する項目に異常があると診断された労働者は、追加で「二次健康診断」を受けることができます。二次健康診断については、下記の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
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職場で労働災害が生じ、労働者が死亡または4日以上休業した場合、「労働者死傷病報告」をすみやかに所轄の労働基準監督署長に提出することが必要です。休業が4日未満の場合は、年に4回まとめて「労働者死傷病報告」を提出することになります。
労働者死傷病報告を適正に提出していない場合、「労災かくし」として処罰されることもあるため、報告義務についてきちんと把握したうえで、適切に報告することが重要です。
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労働者が労動災害により負傷したり死亡したりした場合、必要な保険給付は労災保険から行われます。労働者を1人でも雇っている場合は労災保険に加入する義務がありますので、忘れずに加入手続きを行うことが必要です。
労働者の雇用にあたっては、労働基準法等の労働関係法令についてしっかりと把握し、遵守することが必要不可欠です。雇用のルールに関する正しい理解に基づいて、適切な雇用関係を結ぶことが大切だといえます。
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