雇用のルールを完全マスター!労働関係制度まとめ<前編>

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公開日:2017.6.9

企業が労働者を雇用するにあたっては、労働基準法等の労働関係法令を遵守することが必要不可欠です。somu-lierではこれまで、企業が労動者を雇用する際のルールについて多数紹介してきましたので、ここで一度おさらいをしてみましょう。

今回は、企業が守るべき労働関係制度をまとめて紹介します。

 

労働契約

労働基準法は強行規定です。これは、労働契約を定めても、法に定める基準に満たない部分があればその部分は無効になり、法に定める基準が適用されるということを意味します。

 

契約期間

労働基準法では、期間の定めのある契約(有期労働契約)の期間について、原則 3年を超えてはならないと定めています。有期労働契約は、特別な事情がない限り、契約当事者双方は一方的な理由だけでの解約はできません。

有期労働契約は、契約終了時に労使間でトラブルが発生することが多いことから、トラブル防止のため「雇い止め法理」や「無期転換ルール」などが労働契約法により定められています。下記の記事で詳しく解説していますので、参照してください。

 

・関連記事:労働契約法改正!5年以上働くと無期労働契約が可能に

 

労働条件の明示

使用者が労働者を雇い入れるときは、賃金・労働時間その他の労働条件について、書面の交付によって明示しなければなりません。明示された労動条件と実際の労働条件が異なる場合、労働者は即時に労働契約を解除することができます。
労働条件のうち、以下の事項は必ず明示しなければなりません。2019年4月からは、労働条件通知書の電子化が解禁されたため、これらを書類で交付する必要はなくなりました。

 

① 労働契約の期間

② 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準

③ 就業の場所・従事すべき業務

④ 始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項

⑤ 賃金の決定、計算・支払の方法、賃金の締切り・支払の時期

⑥ 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

⑦ 昇給に関する事項

 

なお、雇い入れた労働者がパートタイム労働者の場合は、パートタイム労働法により「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」「相談窓口」について書面により明示しなければなりません。下記の記事で詳しく解説していますので、参照してください。

 

・関連記事:徹底解説!パートタイム労働法

 

労働時間

使用者は労働者に休憩時間を除いて1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけません。ただし、以下のような例外も存在します。

 

変形労働時間制

変形労働時間制とは、1ヶ月や1年などある一定の期間の労働時間を平均して週あたりの労働時間が40時間を超えないことを条件として、その間の特定の日や週について、8時間や40時間などの限度を超えて労働者を働かせることができる制度です。変形労働時間制については、下記の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

 

・関連記事:長時間労働の削減を実現! 変形労働時間制とは

 

フレックスタイム制

フレックスタイム制とは、3ヶ月以内の一定期間における総労働時間をあらかじめ定めることで、労働者がその総労働時間の範囲内で、それぞれの日の始業や終業の時刻を自主的に決定して働くことを認める制度です。フレックスタイム制については、下記の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

 

・関連記事:効率的な働き方を実現! フレックスタイム制とは

 

休憩

使用者は、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を与えなければなりません。

休憩時間は、原則として、労働時間の途中で一斉に与え、かつ、労働者の自由に利用させなければなりません。ただし、運輸交通業、商業、保健衛生業、接客娯楽業等の事業の場合には、一斉休憩の対象外となります。また、それ以外の事業でも、労使協定の締結により、一斉休憩の適用除外とすることができます。

 

休日

休日とは、労働契約上、労働義務のない日のことをいいます。労働基準法上、毎週少なくとも1日か、4週間を通じて4日以上は、必ず休日を与えなければなりません。ただし、4週4日制はあくまで例外であり、「4週間」の起算日を就業規則等により明らかにすることが必要です。

 

振替休日と代休

振替休日とは、あらかじめ休日と定められていた日を事前の手続きにより労働日とし、その代わりに他の労働日を休日にすることをいいます。これに対し、代休とは、休日に労働が行われた後に、その代わりとして休みを与えることをいいます。

振替休日と代休は、割増賃金の支払義務等の取扱いが異なるため、制度について正しく理解しておくことが必要です。下記の記事で詳しく解説していますので、参照してください。

 

・関連記事:法定休日と所定休日、振替休日と代休の違い、分かりますか?-休日制度、完全マスター!

 

時間外・休日労働

法定労働時間を超えて労働者に時間外労働をさせる場合や労働者を休日に働かせる場合、あらかじめ労使協定(36協定)を締結し、所轄の労働基準監督署長に届け出ることが必要です。36協定の締結事項等については、下記のURLからダウンロードできる「お役立ち資料」で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

 

なお、現行制度上、36協定に「特別条項」を定めることで、上限無く時間外労働を行わせることが可能となっています。しかし、これは長時間労働を招くことから、2017年3月末にとりまとめられた政府の「働き方改革実行計画」において、時間外労動の上限を設ける方針が示されています。改革の方向性については下記の記事で詳しく解説していますので、しっかり押さえておくようにしましょう。

 

・関連記事:働き方改革実行計画が決定!Vol.2 ~長時間労働の是正について~

従来の制度では、36協定に「特別条項」を定めることで上限無く時間外労働を行わせることが可能となっていましたが、2020年4月よりすべての企業において時間外労働の上限に法的制限が課されるようになりました。時間外労働の上限は原則として「月45時間、年360時間」と制限されており、これを違反した場合には使用者に罰則が課されます。
また、労使協定に特別条項がある場合においても、時間外労働の上限は「月100時間、年720時間」と定められており、1ヶ月45時間を超えることができるのは、6ヶ月までとなっています。

 

労働時間の算定

労働基準法では労働時間や休日、深夜業等について規定を設けていることから、使用者は労働者の労働時間を適切に把握し、管理する責任を有しています。

厚生労働省は、使用者が労働者の労働時間を管理するにあたってのガイドラインを定めているので、企業はこのガイドラインに沿って労働時間管理を行うことが大切です。また、労働時間の管理にあたっては、どのような業務に従事している時間が労動時間とみなされるのかを把握しておくことも必要不可欠です。労動時間の範囲についてもしっかりと押さえておくようにしましょう。

 

・関連記事:勤怠管理がますます重要に! 厚労省、労働時間の適正な把握のためのガイドラインを公表

・関連記事:着替えや仮眠も?! ―「労働時間」の範囲、徹底解説!

 

なお、業種によっては労働時間の管理を行うことが難しい場合もあることから、労働時間の管理については、以下のような例外が存在します。

 

事業場外労働

外勤の営業職などで使用者が労働時間を把握できない場合、「事業場外労働」として、所定労働時間労働したものとみなすことができる場合があります。

 

裁量労働制

事業場内での労働であっても、業務の性質上その業務の遂行方法や時間の配分などを大幅に労働者の裁量に任せる必要がある業務に関しては、使用者が労働時間の管理を行わず、労使で締結した協定に定める時間労働したものとみなすことができます。これを「裁量労働制」といいます。

 

年次有給休暇

使用者は、雇入れの日から6ヶ月間継続勤務して全労働日の8割以上出勤した労働者に対し、10労働日の有給休暇を与えなければなりません。また、1年6ヶ月以上継続勤務した労働者に対しては、6ヶ月を超えた日から起算した継続勤務年数1年ごとに、継続勤務2年目までは1日ずつ、3年目以降は2日ずつが、最大10日(合計20日)まで加算されます。

有給休暇の賃金に関しては、以下のいずれかを支払うことが必要です。

 

① 平均賃金

② 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金

③ 健康保険法に定める標準報酬日額に相当する金額(労使協定に定めのある場合)

 

日本を含めた諸外国の年次有給休暇制度については下記の記事で紹介していますので、参照してください。

 

・関連記事:海外のバカンス事情とは?! 年次有給休暇制度の国際比較

 

年次有給休暇の計画的付与

年次有給休暇の計画的付与制度とは、労使協定を締結することで、年次有給休暇のうち5日を超える日数について、計画的に休暇取得日を割り振ることができる制度のことをいいます。年次有給休暇の計画的付与を活用することで、有給休暇の取得促進を図っていくことが大切です。

 

・関連記事:年次有給休暇の計画的付与制度を活用しましょう!

 

 

まとめ

労働者の雇用にあたっては、労働基準法等の労働関係法令についてしっかりと把握し、遵守することが必要不可欠です。雇用のルールに関する正しい理解に基づいて、適切な雇用関係を結ぶことが大切だといえます。

 

 

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