Categories: クローズアップ

働き方の次は「休み方」? 導入へと動く休み方改革の現在地

 政府主導の働き方改革の考え方が各所に浸透してきたことを受け、次は「休み方改革」に乗り出そうという動きがあります。休み方改革とは、一時期に偏りがちな休暇制度を見直して、労働者が休暇を取得しやすい環境を作る取り組みのことで、有給取得を促進する企業への助成などの施策が検討されています。休み方を改革するためには、有給休暇の取得率の向上などの課題に取り組む必要があります。今回は休み方改革について、その目的や見込まれる効果、導入までのハードルについて解説します。

休み方改革とは?

休み方改革とは、夏休みやゴールデンウィークなどに偏りがちな休暇制度を見直し、その他の時期でも休暇が取得しやすい環境を作る取り組みのことです。つまりは、いつでも有給をとれるような環境を作る取り組みと言い換えることもできます。具体的な施策としては、有給休暇を促進する企業への助成や、キッズウィークの導入などが検討されています。

キッズウィークとは、子供の夏休みの最終週を授業日として、その1週間分の休日を国民の祝日の前後や、都民の日などの地域ごとに存在する休日の前後に振り替えるというものです。これによって、大人と子供が一緒にまとまった休日を過ごせる時期が新たに増え、有休取得率が上がることが期待されています。

関連記事:
「週休3日制」はうまくいく?導入のメリット・デメリットについて考える
育児と仕事の両立に、時短勤務制度を利用しましょう

 

休み方改革の目的と効果、課題

目的

休み方改革における政府の目的は3つあります。

  • ワークライフバランスの推進
    キッズウィークなどを導入し子供と大人が一緒に過ごす時間が増えることで、私生活の充実へつながることが目指されます。私生活の充実は、仕事の効率性も高めると考えられています。
  • 生産性向上
    休日が増えることによって、ストレスや身体的な疲労が取り除かれ、リフレッシュした状態で仕事に臨むことができ、仕事の効率が上がり、生産性が向上することが期待されています。
  • 地域活性化
    キッズウィークなどの導入によって様々な時期に家族で出かけるようになり、旅行や地域イベントに参加する人が増えることで、地域活性化につながることを目指しています。

見込まれる効果

休み方改革により見込まれる効果が2つ挙げられます。

  • 個人の能力の活性化
    近年、充分な休暇を取ることは、仕事以外の様々な事柄への多角的な関心を持つ時間を得られるため、回り回って仕事でのイノベーションを生むことにつながると考えられています。また、休むことで、仕事以外の人間生活を充実させる時間を作ることができるため、総合的な人生の幸福度が上がり、総合的な人生の幸福度が上がれば、個人としてのパフォーマンスも向上することができます。このように、休み方改革には個人の能力の活性化を促す効果があるものと見込まれています。
  • 経済効果
    休みが増え家族旅行が増えると、レジャー施設や宿泊施設などの観光業者は、年間を通して利益を得られるようになるでしょう。また、消費行動の観点からは、家族間での会話の量が消費の決め手になると言われており、休みが増えて家族間で連休の予定についての会話などが増えることで、より多くの消費が誘発される可能性があります。このように休み方改革には、経済効果を期待することができます。

休み方改革を受け入れるための企業の課題

政府が休み方改革に取り組むうえでの課題に、休み方改革が浸透しにくい以下のような日本企業の風土があります。

  • 業務の属人化の解消
    中小企業など人手の足りない企業で有給取得率が低いのは、休日が増えたとしても、その分の業務量が減るわけではなく、結局その他の日に残業が増えてしまうという理由があります。その根本的な原因は、多くの業務が属人化されていて、特定の従業員しかその遂行ができないことです。そのため担当者が有給を取って休めば、業務が回らなくなってしまいます。このような状態は、程度の差はあるでしょうが、中小企業に限らず多くの企業に見出せるのではないでしょうか。こうした悪循環に陥らないためにも、業務をできるだけ属人化させないようにすることが大切です。部署ごとなどの単位で、業務を全員が補填できるような体制を構築することが望まれます。
  • 不必要な業務の見直し
    不必要な業務の負担が、労働者の有休取得を阻害している可能性があります。たとえば定例会議など、長年の慣習となってはいるが効率的に機能していない業務があるかもしれません。このような不必要な業務に費やされる労力と時間は、労働者にとって大きなロスとなります。こうした状態を見直し、現在それに充てている時間をその他の必要な業務へ回し、時間的な余裕ができれば、有給休暇の取得が増えることも考えられます。そのため定例会議などは、本当に必要なのか、誰が出る必要があるのか、どのくらいの頻度で必要なのかなど、定期的に検討し直す必要があります。
  • ITの活用
    休み方改革を進めて行くには、業務の無駄を可能な限り省いて効率を上げることによって、休む時間を確保するという考え方が必要になります。その実践において、ITの活用は大きなサポートとなります。これまで紙媒体で管理していた書類をクラウド上で管理したり、手入力で行っていた勤怠管理をシステムの導入によって自動化したりなど、ITを活用することによって労働者の時間的余裕を生むことができます。

関連記事:
【脱属人化の指南書】総務業務の可視化戦略
メンタル不調の可能性も?社員の「勤怠の乱れ」が示す意味とは?
メリハリのある働き方へ、法定外休暇制度を導入しましょう!

 

まとめ

今回見てきたように、政府が提唱する休み方改革が成功するためには、企業単位で労働環境を整備していかなくてはいけない面もあります。生産性向上のためにも、業務の属人化の解消など、企業として取り組めることを行ってみてはいかがでしょうか。

Recent Posts

This website uses cookies.