売上数字のような「目に見える成果」が出にくい分、他部門から頑張りを理解されづらい総務部の仕事…。そんな悩みや喜びを心の底から理解し合えるのは、やっぱり総務の人同士。ということで、4名の現役総務のみなさんに集まってもらい、ざっくばらんに語ってもらいました。顔出しでは語れない「総務の悲喜こもごも」を聞いてみようじゃないですか!
参加者プロフィール
-ソムリエ編集部:忙しいなかお集まりいただきありがとうございます! 早速ですが、自己紹介を兼ねてみなさんがどういう経緯で総務になったのか教えてください。
Aさん:80年以上の歴史があるシステム開発会社で働いています。異動で情報システム部に入ったのがきっかけだったんですが、いざ始めてみると、社内システム以外に気になるところがたくさん出てきたんです。例えば、管理職になるまでひじ掛けつきのイスや袖机が使えないなど、露骨で無意味な差別があったり(笑)。そういう変なところをどんどん改善していたら、「それって情シスの仕事じゃないよね、総務だよね」って話になり、総務部に異動しました。
Bさん:私は東京と地方に拠点を持つ中小システム開発会社で働いています。経理という話で入社したんですが、入ってみると事務の人が私以外一人もいなくて(苦笑)。気が付いたら経理だけじゃなく、総務とか庶務とか、さらには社長の子守りみたいな仕事まで全部やっていました。前任者もいなかったので、何にも決まっていなかった事務の仕事の流れをイチから自分で作ってきたんですよ。
Cさん:私はAさんの経歴とちょっと似ているかな。私も元々エンジニアで作業環境など疑問に思うことがたくさんあったんですね。その改善提案を続けていくうちに、いつの間にかオフィスのレイアウトを考えたり、作業効率をあげるために机やイスを見直したりなど、仕事が広がっていきました。そして、次第に部下が増え、自分がその部長になったんです。
Dさん:みんな気が付いたら総務だったという感じなんですね(笑)。僕は今ベンチャーで総務だけじゃなく法務とか人事とかバックオフィス全般を担当しています。少ない人数で仕事を回すにはどうしたらいいのか常に考えていますね。「人が足らないからそっちでやって!」って現場にぶん投げることも多いですけど(笑)。
-ソムリエ編集部:ひとくちに総務と言っても会社によって全然違うんですね。
Aさん:ホントにそうですよね。ちなみに、ウチは会社に歴史があるので、総務にも悪しき伝統みたいなものがありました。それは「余計なことをしない」「リスクはとらない」というスタイル(笑)。そこを私たちが変えていかなくちゃって思っています。
Cさん:私の会社は入社してから現在まででかなりの規模に成長しました。人が増えていくことで、この仕事は人事だよね、こっちは総務だよねって自然に区分けされていきました。
Dさん:そうそう、ベンチャーみたいに成長ステージのど真ん中にいる会社の場合は、日々その役割が変わっていくものですよね。だから一概に何をしているか言えない。
Bさん:ウチみたいな中小企業の場合は、総務は「なんでも屋さん」に近いと思います。それで社員のみんなから毎日いろんなお願いごとがくるんですよ。やれパソコンが壊れたとか、やれエアコンの効きが悪いとか…雑用係と勘違いしているんじゃないのって思うこともありますね。
Dさん:軽く見られると腹立ちますよね。総務って本当に業務範囲が広くて、複雑なわりには評価が低すぎだと思いません? 在職中の実績が見えにくいから、転職しにくいとも言われていますし。
Cさん:確かに実績は見えにくいですよね。だから部下には防火管理者とか衛生管理者とか、少しでも資格を取るように勧めています。
Dさん:資格を取るために学生時代のようにテキストで勉強したり、遠い試験場に受けにいったりするのって「総務あるある」ですよね。
Bさん:派遣法改正でどんな対応が必要になるかとか、世の中の流れにもついていかないといけないでしょう? 常に新しいことを勉強するのも大変です。ちなみに私は、今も管理会計を勉強しているところなんですよ。
Dさん:そうやって努力している総務の人って多いじゃないですか。朝早く出社して勉強したり、休日を犠牲にしてでも知識を得ようとしたり…なのにそういうところにスポットライトが当たりにくいんですよねぇ。
-ソムリエ編集部:他部門の人は総務の努力に気づいていないでしょうね。
Aさん:それどころか総務への当たりがキツイなぁって思うことありません? この前、社内の人に「金を稼いでない部門なのに遅くまで残っていいと思ってるの?」って言われたときは堪えましたね。
一同:えー! それは酷い…。
Aさん:上司がその人をビシッと叱ってくれて少しはスッキリしたんですけど、今も胸の痛みが残っています。そんな風に見られていたのは、やっぱりショックですよ。
Bさん:ウチはその反対で、エンジニアさんに「総務は早く帰ることができていいね」って言われたことがあるんですよ。こっちの苦労も知らないで、好き勝手に言うのは止めてほしいですよね。ちなみにウチの会社、少し前まで総務はほかの仕事より1万円も給与が少なかったんですよ! 先代社長も「それは仕方ないだろ」って言っていて。
一同:うわー、それも酷い。
Bさん:ここだけの話ですけど、ウチの会社はある時期まで銀行への支払いをリスケしていたんです。社長は銀行に頭を下げられないっていうから、私が何度も足を運びました。税務署や社会保険事務所の差し押さえが入ったら困るので、税務署や社会保険事務所にも毎日のように頭を下げに行っていました。「Bさんがいなかったら会社がつぶれていたかも」と銀行の方に言われたことは忘れられないですね。そこまでしているのに、会社に理解されなかったらやっぱり辛いですよ。
―ソムリエ編集部:Bさんは本当に壮絶な体験をされているんですね。その話を聞いた後だと、この調査の結果には違和感を覚えるかもしれません。「社会人1年目と2年目の意識調査」によると、2015年の「配属されたい部署」の人気ナンバーワンが総務だったそうなんです。この結果をみなさんはどのように捉えますか?
Dさん:えっ! それどういう意味ですか? お気楽そうだから総務がいいとかそういうこと?
Aさん:まあ確かに大企業の総務なら仕事が縦割りで決まっていて、ラクそうというイメージはありますね。でもそれはレアケースで、従業員が少ないところの総務は何でもやりますからね。
Bさん:ホント、実際は違いますよねぇ。隣の芝生は青く見えるのかしら。
Cさん:そもそも社会人1年目、2年目の総務のイメージって、ぼんやりしていると思うんですよね。何かしらの問題意識があって総務を希望するっていうのなら分かるけれど、多分そうじゃないですよ。なんで総務を希望しているのか気になるなぁ。今の仕事が辛いから総務がよく見えるのかな?
Dさん:ラクそうに見られているなら心外だし、そういう気持ちで総務部に入ってきてもすぐに潰れますよ。まったり働きたくて総務を希望している人が身近にいたら、首根っこ捕まえて「総務なめんなよ!」って言ってやりたいです!
―座談会の前半では、総務部の現実とかけ離れた周りからの評価が見えてきました。実際は「総務がいなければ会社が潰れていたかもしれない」という事例まで飛び出てきましたが、「総務の仕事内容を理解されていない」というのは、どの会社にとっても共通する悩みのようです。座談会の後半では、「会社のお荷物じゃない」と胸を張って言える総務になるために、求められる人物像について語っていただきました。
This website uses cookies.