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定期健康診断にプラス! 二次健康診断を活用し、社員の過労死を防止しましょう

労災保険法では、労働者が定期健康診断で過労死等に関連する項目に異常がある場合、自己負担なく「二次健康診断」を受けられる制度を設けています。

厚生労働省は、企業に対して二次健康診断の対象となる労働者の把握や該当者への受診の勧奨を求めており、社員の健康管理の観点からも、企業は二次健康診断制度について把握しておくことが重要です。

今回は、二次健康診断制度の概要について解説します。

 

二次健康診断制度とは

二次健康診断制度とは、労働安全衛生法に基づく定期健康診断等のうち、直近のもの(一次健康診断)において脳・心臓疾患に関連する項目に異常があると診断された労働者が、「二次健康診断等給付」を受けられる制度です。

二次健康診断等給付により、労働者は、脳血管及び心臓の状態を把握するための「二次健康診断」や、その結果に基づいて脳・心臓疾患の発症の予防を図るために医師等により行われる「特定保健指導」を、自己負担なく受診することができます。

労働環境の変化などにより、仕事や職場生活に関する強い不安や悩み、ストレスを感じる労働者の割合は年々増加しています。定期健康診断において何らかの異常の所見があると認められる労働者の割合は5割を超え、過労死等の事案も増加傾向にあります。

このような状況を踏まえ、労働者の業務上の事由による脳・心臓疾患の発症を予防するため、二次健康診断制度が活用されています。

 

二次健康診断等給付の対象者

一次健康診断の結果において、下記の4項目すべてに異常所見があると診断された労働者が、二次健康診断等給付の対象となります。

  • 血圧検査
  • 血中脂質検査
  • 血糖検査
  • 腹囲の検査または肥満度(BMI)測定

 

ただし、下記の人については、二次健康診断等給付の対象外となります。

  • 労災保険に加入していない人
  • 労災保険に特別加入している人(中小企業の経営者等)
  • すでに脳・心臓疾患を発症している人

 

二次健康診断等給付の内容

二次健康診断等給付では、下記の「二次健康診断」や「特定保健指導」を、労働者の自己負担なく受診することができます。

 

二次健康診断

脳血管と心臓の状態を把握するために必要な検査であり、下記の検査を行います。

  • 空腹時血中脂質検査
  • 空腹時血糖値検査
  • ヘモグロビンA1c検査(一次健康診断で行っている場合を除く)
  • 負荷心電図検査または胸部超音波検査
  • 頸部超音波検査
  • 微量アルブミン尿検査

 

特定保健指導

二次健康診断の結果に基づいて、脳・心臓疾患の発症の予防を図るために医師や保健師の面接により行われる保健指導であり、生活指導や栄養指導、運動指導などを行います。

 

二次健康診断の受診の流れ

二次健康診断は、労災病院または都道府県労働局長が指定する病院・医療機関(以下、「健診給付病院等」)で受診することができます。

二次健康診断の受診を希望する労働者は、「二次健康診断等給付請求書」に必要事項を記入し、事業主の証明を受けます。一次健康診断の結果を証明できる書類とともに、請求書を健診給付病院等に提出することで、労働者は二次健康診断を自己負担なく受けることができます。請求書は、健診給付病院等を経由して所轄の都道府県労働局長に提出されます。

 

注意事項

二次健康診断等給付の請求は、一次健康診断を受診した日から3ヶ月以内に行わなければなりません。また、二次健康診断は、1年度内(4月1日より翌年の3月31日までの間)に一回しか受診できません。

 

社員の健康確保のため、企業に求められる取組

社員の過労死等を防止するためには、二次健康診断を活用することなどにより、社員の健康確保を図っていくことが重要です。このため、企業には下記のような取組が求められます。

 

一次健康診断の確実な実施

労働安全衛生法では、企業に対し、労働者への健康診断の実施を義務づけています。まずは、この一次健康診断を確実に実施することが必要です。社員への周知や指導を徹底することで、受診率の向上を図るようにしましょう。

 

二次健康診断の受診勧奨

次に、一次健康診断の結果に基づき二次健康診断の対象となる社員を把握し、対象者に二次健康診断の受診を勧奨するようにします。

二次健康診断の受診は義務ではないため、社員に強制することはできませんが、二次健康診断の必要性や重要性を丁寧に説明することなどにより、きちんと受診してもらえるよう働きかけることが大切です。

また、二次健康診断を受けた社員には、その結果を提出してもらうように働きかけましょう。

 

健康診断の結果についての医師等からの意見の聴取

労働安全衛生法では、企業に対し、健康診断の結果について医師等に意見を聞かなければならないことを定めています。健康診断個人票の「医師の意見」欄に、社員の健康保持のために必要な措置について意見を記入してもらうようにしましょう。

なお、二次健康診断等給付の請求は、一次健康診断の実施から3ヶ月以内に行わなければならないため、医師からの意見聴取は速やかに行うことが求められます。

 

健康診断実施後の措置

医師等から聴取した意見をもとに、必要があると認められる場合には、労働時間の短縮や作業の転換等、社員の健康を保持するための適切な措置を講じるようにしましょう。

このとき、あらかじめ当該社員の意見を聞き、十分な話し合いを通じて本人の了解が得られるように努めることが大切です。

 

その他の留意事項

労働安全衛生法では、企業に対し、一次健康診断結果の記録の保存を義務づけています。二次健康診断の結果については保存の義務はありませんが、社員の継続的な健康管理という観点からは、二次健康診断結果も保存することが望ましいといえます。

ただし、二次健康診断結果の保存にあたっては社員の同意を得ることが必要であるため、この点については留意するようにしましょう。

 

まとめ

社員の健康を守るためには、健康診断を着実に実施し、健康診断結果に基づいた就業上の措置を講じることが大切です。また、二次健康診断の対象となる社員には、積極的に受診を促すことで、過労死防止に役立てるようにしましょう。

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