働き方改革によって日本では柔軟な働き方が広まりつつありますが、日本が目指す柔軟な働き方がすでに制度として組み込まれている国も存在します。例えばイギリスでは、特定の条件を満たす従業員が柔軟な、働き方の権利を主張できる「フレキシブル・ワーキング法」が整備されているなど、様々な施策が進められています。今回はそんなイギリスで行われている労働支援制度を紹介し、日本の働き方のこれからを考えていきます。
「フレキシブル」とは「柔軟な」という意味の英語で、「フレキシブル・ワーク」とは場所や時間に囚われずに働ける労働制度全般を指します。欧米では既にフランス、オランダ、アメリカ等で国を挙げての取組が始められており、中でもイギリスは平成12年のワーク・ライフ・バランス向上キャンペーンを皮切りに、雇用法、就業家族法、フレキシブル・ワーキング法、育児休暇規制等を次々に施行し、労働者がより自由で快適に働くための法制面での整備が進められてきました。イギリスの労働環境について、フレキシブル・ワークに関連する法的規定の概要は以下の通りです。
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イギリスの企業等で行われているフレキシブル・ワークのシステムは非常に多く、1企業単位での新制度開発なども見られます。具体的にどの様な取り組みが採用されているか見ていきましょう。
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イギリス政府が英国内の雇用主を対象にワーク・ライフ・バランスついての意識や取り組みを調査した「ワーク・ライフ・バランス調査」(過去、平成12年、15年、19年、25年実施)によると、フレキシブル・ワークを採用する企業は増加しており、平成25年には1形態以上のフレキシブル・ワークを導入している企業が97%に達しています。上に挙げたもののうち、最も導入率が高いのは一定期間の時間短縮(74%)、次いでジョブシェアリング(54%)、フレックスタイム制(54%)、圧縮労働時間(41%)、学期間労働時間制(38%)となりました。また、イギリス通商産業省(DTI)による労働者を対象とする調査(平成18年)では、フレキシブル・ワークの利用率の高さについては、フレックスタイム制(55%)、ホームワーキング(54%)が高い傾向にありました。しかし同時に、勤務体制の変更を申請した際に77%が全面的に承認された一方で、20%は拒否されたという結果も出ました。とはいえ、平成25年ワーク・ライフ・バランスについて企業側のフレキシブル・ワークについての見解は「悪影響を及ぼす」が9%であるのに対して、「非常に好ましい」「好ましい」は56%とされ、今後も実施が継続されることが見込まれています。
イギリスでは柔軟で快適な労働環境が年々整えられているのに対し、日本の労働時間の長さ、残業の多さ、過労死問題の深刻さ、女性の育児と仕事の両立の困難さ、育児産休休暇等の取りづらさなどを顧みれば、フレキシブル・ワークの導入が欧米のように進んでいるとは到底言えません。こうした現状に対して、東京都主導の時差Bizキャンペーンなど、行政の側も手を打ってはいますが、その効果のほどを考えれば未だ道半ばと断ぜざるを得ないでしょう。
働く側に過度の負担を強いる労働環境は合理的ではありません。生産性向上の観点からも、日本はイギリスや他国のようなフレキシブル・ワークを部分的にでも採用することを検討してみる必要があると言えます。法的な改革を待つばかりでなく、個々の企業も自社に可能な取り組みがあれば積極的に導入することで改善していくことが重要です。
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