【働き方改革事例】オランダの理想的なワークライフバランス

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公開日:2018.3.8

オランダは年間平均労働時間が最も短い国として知られており、その多様な働き方からも「子供が世界一幸せな国」と形容されています。労働者1人あたりの労働時間を削減するワークシェアリングの考え方が古くより浸透しているオランダでは、週休3日制で働く労働者も珍しくなく、その働き方は日本とは大きく異なります。今回はそんなオランダが理想的なワークライフバランスを実現している背景を探り、日本との相違点を解説します。

オランダの法制度

オランダの快適な労働環境はオランダ独自の様々な法制度に支えられています。労働条件に加え産休等の休暇制度についても整備が進み、ある種の休暇申請などにおいては雇用者が労働者の申請を拒否することが禁止されるなど、労働者の権利が手厚く保護されています。

休暇制度

  • 父親休暇
    配偶者の出産後4週間のうち2日間が取得できます。休暇中は所得の100%が保証され、雇用者は申請を拒否することは禁止されています。この父親休暇は、さらに最長で3日間の無給休暇を申請することができます。 
  • 産前産後産休
    出産の前後16週間を休暇として取得できます。産前は予定日の4~6週間前から開始することができ、産後は10週間以上と取り決められています。所得の100%が保証され、こちらも雇用者は取得の申請を拒否できません。 
  • 養子休暇
    養子縁組する親または里親は、その子供が新しい家で暮らし始める2週間前から16週間後までの期間のうち、連続した4週間を休暇として取得できます。上記と同様に所得は100%保証され、雇用者が申請を拒否することも禁止されています。 
  • 短期介護休暇
    親や同居する子供、配偶者を短期間介護するために、年間で週労働時間の2倍の時間が休暇として申請できます。所得は70%以上で最低賃金を下回らない額が保証されますが、業務に重大な支障がある場合には雇用者の判断で申請を無効にできます。 
  • 緊急及び他の短期休暇
    個人的な理由により仕事を休まなければならない場合、事情に応じて2、3時間から2、3日分を申請できます。これについては所得の100%が保証され、雇用者は拒否することができません。 
  • 長期介護休暇
    深刻な病を負った子供、配偶者、親の介護のために、12週間を単位期間としてそのうち最大で週労働時間の半分を休暇として申請することができます。所得の保証はなく休暇中無給であり、雇用者も業務に重大な支障を来す場合拒否することが可能です。 
  • 育児休暇
    子供が8才になるまでの間、週の労働時間の26倍の期間を取得できます。ただしこちらも休暇中は無給になります。雇用者は取得の申請を拒否することはできません。

労働制度

  • 労働時間
    原則として1日に12時間、週に60時間を上限としています。 
  • 傷病欠勤
    傷病により就労が不可能な場合、最初の2年は労働者に賃金の最低70%を支払う義務が雇用者にはあり、この期間中に労働者を解雇することは認められません。 
  • 残業
    残業手当等に関する労働法上の規定はなく、基本的には労使間の交渉で細則が定められます。

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労働環境についてオランダと日本との比較

オランダでは男女共に快適に働くことが目指され、日本のような長時間労働、男性に偏った就業率の高さ、正社員とパートタイム労働者の間の格差などは見られません。むしろ、オランダでパートタイム労働は一般的な働き方であり、長時間労働を解消し快適で柔軟な労働を実現する要因ともなっており、また女性も長年に渡り仕事を続けることができます。

労働者の負担が少ない労働環境

  • 労働時間
    オランダの労働環境の特徴の1つに、労働時間が短いことが挙げられます。ひとり当たりの労働時間は、日本が年間1,714時間であるのに対してオランダは1,378時間で、これは先進諸国の中でも群を抜く短さです。また、オランダでは労働時間について満足している労働者が男女共に80%以上を超え、労働時間を短縮したいと答えた男性は約6%、女性は約12%となります。これは、労働時間の長さについて満足する男女が約60%程度であり、短縮させたい者が約30%ずついるという日本の現状とは大きく異なっていると言えます。 
  • フレキシブル・ワーク
    パートタイム労働や育児に柔軟に対応できる環境作りがオランダで可能となった要因の1つに、場所や時間を選ばず仕事のできるフレキシブル・ワークが充実していることが挙げられます。デジタル機器やパソコンの利用によってオフィス外勤務や在宅勤務が可能になるテレワークですが、日本ではテレワークを活用している労働者は5%程度に留まります。それに対してオランダでは26%程度となり、在宅勤務労働者も約20%と主要国最高の比率を示します。

労働者の人生設計がしやすい環境

  • 男女差
    日本では長年問題にされ、いまだ解決の兆しが見えない男女間での不平等と女性の育児等の負担の重さですが、オランダではそれらが改善されていると言えます。就業の男女差について、先進諸国の中でも日本は男性の就業率が著しく高い一方で、女性の就業率は決して高いとは言えず、特に3才以下の子供を持つ母親の就業率はわずか1%となっています。それに対しオランダでは、男女間の比率差は日本の半分ほどで、母親の就業率も約70%となっています。従って統計上の数字からは、日本に比べてオランダは女性や育児にも優しい労働環境であることが見て取れます。
    これは、育児に際する男女間での取組にも表れます。日本では未だ育児と仕事の両立が困難とされるため、結婚や妊娠を機に女性は寿退社などを強いられ、男性が仕事を継続するという傾向が根強く残っています。しかしオランダでは就業率が育児を挟んでV字を描くのは男女に共通しており、日本ほど出産や育児への取組み方に性差が影響しないことが窺えます。 
  • パートタイム労働者と正社員の賃金差
    オランダでパートタイム労働者が多くなる理由には、パートタイム労働者と正社員の賃金差があまり無いことが挙げられます。日本では正社員とパートタイム労働者、特に男性正社員とその他の賃金差が大きい傾向にあるのに対して、オランダでは男性正社員から女性パートタイム労働者まで賃金が比較的平等になっています。これは政府主導でフルタイム労働者とパートタイム労働者との間に賃金や社会保障などの労働条件の格差を設けることを禁止したためで、オランダではパートタイム労働の活用が未熟練の低賃金労働だけでなくさまざまな業種に広がっています。そのため、日本よりもパートタイム労働が行いやすくかつ受け入れられていると言えます。 
  • 労働を支えるサービス
    オランダでは、就業率の男女間格差の改善に即し保育サービスが拡張され、特に3才以下の子供を持つ家庭でのサービス利用率は約60%となっています。特に友人や知人などの無償での支援が30%程度となっています。

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まとめ

オランダはパートタイム労働とフレキシブル・ワークを大胆に取り入れた労働条件に加え、育児や出産へのサポート体制の整備によって、男女共に快適な労働を実現しやすくなっています。日本の長時間労働や男女間の不平等、仕事と育児の両立の難しさ、パートタイム労働者と正社員の賃金格差などを改善する上で、オランダの取組は参考になる点が多いのではないでしょうか。

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