確定拠出年金の掛金は、従来は月単位での拠出が求められていましたが、平成30年1月からの制度改正により拠出の単位が変更されることとなりました。それによって拠出額の変更がより柔軟になり、ボーナス月にまとめて掛金を納付するといった運用が可能となります。本記事では確定拠出年金制度の概要、そして平成29年と今回の平成30年の改正について、主なポイントを解説します。
確定拠出年金制度の改正に伴う変更点を解説する前に、そもそも確定拠出年金制度とはどのような制度であるかをおさらいしておきましょう。
平成13年に始まった確定拠出年金制度は、国民年金に代表される公的年金に上乗せして私的年金が給付される制度のうちの1つです。平成13年以前にも厚生年金基金や確定給付企業年金といった企業年金制度が存在していましたが、中小の零細企業や自営業者の間では充分に普及していないこと、離職や転職に際する年金資産の持ち運びが必ずしも確保されておらず労働移動への対応が難しいことなどの問題点が指摘されていました。これを受け、確定拠出年金制度が始まりました。
この確定拠出年金制度は、自身で老後のために掛金を拠出し、資金を運用するという性質を持ちます。加入者個人や企業が毎月一定額の掛金を拠出し、積み立てられた資金は将来的に老齢給付金、障害給付金、死亡一時金として支給されます。ここで、掛金を拠出する主体が個人である確定拠出年金を個人型確定拠出年金(iDeCo)、主体が企業であるものを企業型確定拠出年金と言います。
2つの確定拠出年金の大きな違いは、掛金を拠出する主体と資金の運用方法の自由度にあります。
個人型確定拠出年金の掛金を拠出するのは個人であるのに対し、企業型確定拠出年金の場合は企業が拠出しますが、運用主体が加入者本人である点は共通します。企業が従業員の老後のための資金形成を用意するものであることから、企業型確定拠出年金はしばしば退職金制度と対に考えられますが、企業と従業員のどちらが資金運用の主導権を握るのかが異なります。しかしながら、個人型では積み立てた資金をどの金融機関に運用してもらうかは個人が選択するのに対し、他方の企業型では、一般的には企業があらかじめ積み立てた資金を運用するための運用商品をいくつか選んでおり、従業員がその中から気に入ったものを選択するといった形を取ります。
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平成29年1月1日から施行された改正確定拠出年金制度で大きく変化した点は、個人型確定拠出年金の加入者範囲が大幅に拡大されたことです。改正以前では、個人型への加入資格は国民年金保険第1号被保険者と一部の第2号保険者に限られていました。しかしこの改正により、第3号被保険者や企業年金を導入する会社の社員、公務員等共済に加入している方にまで加入が認められるようになりました。
つまり、現在では「20歳から60歳の国民年金保険加入者」のほぼ全員が個人型確定拠出年金制度を利用できるようになっています。詳しくは以下の記事で解説しています。
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今回の改正での一番大きな変更点は、拠出限度額が月単位から年単位となったことです。これにより、個人型確定拠出年金の掛け金をまとめて拠出することが可能になりました。今までは掛け金は月単位で拠出するよう定められていましたが、改正により平成30年1月1日からは1年間分をまとめて拠出したり、複数月分の掛け金をまとめて拠出したりすることができるようになりました。まとめることができるのは12月から翌年の11月までの期間内で、納付は1月から12月までの範囲で行う必要があります。これにより、加入者はボーナス月に掛け金をまとめて納付するなどの方法を採れるようになり、ニーズに合わせた納付が可能となりました。
年単位への変更によって可能になったことはもう1つあります。従来、月ごとの拠出額は毎年3月に決定し、通年で変化することはありませんでした。しかし今回の改正により、月ごとの拠出額をフレキシブルに変更することができるようになりました。これによって、何らかの原因で期間内での掛け金の拠出が厳しくなってしまった場合は、拠出額を減らしたり、複数月でまとめたりすることで個人の事情に合わせて対応することができるようになっています。
さらに企業型確定拠出年金においても、規約に拠出方法を定めることで個人型の場合と同様に複数月分の掛け金をまとめて拠出することができるようになっています。もちろん、以前と同様にひと月毎に拠出することも可能です。
今回の改正では、特に個人型の確定拠出年金制度を利用する方にとっては選択の幅が広がり利用しやすくなりました。企業型の確定拠出年金制度においても、掛け金を複数月でまとめて支払うことができるなど変更点があり、企業側は適切に対応できるように改正を随時確認し、漏れがないようにしておきましょう。
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