日本社会に大きな打撃を与えた2011年の東日本大震災。被災地を中心に、様々な企業・非営利団体・個人が、「自分たちにできることを」という使命感に駆り立てられ、手探りで復興支援活動に参加しました。
もともと人道的支援(ここでは広義に「人」にかかわる企業)をCSRの主軸としていなかった企業も、この震災をきっかけに、積極的な活動への取り組みを始めています。たとえば…
こうした活動はもちろん人道的支援の一環ですが、ほんの一部にすぎません。「自社らしく、ひと味違うCSR活動をしてみたい!」とお考えの企業様に向け、今回は海外のユニークなCSR活動事例をご紹介します。
目次
最初に紹介する海外事例は、靴のオンラインショップとして創業し、衣料や小物など商品を多角化しているザッポス。若き創業者トニー・シェイのカリスマ性や、ザッポス・ファンともいうべき熱狂的な顧客、社員との「ファミリー」的絆を重視する企業文化などで日本でも話題の企業です。このザッポスのいかにもザッポスらしいCSR活動事例が、「新たなファミリーを迎える人の支援」です。
ザッポスは、イヌ・ネコの殺処分をなくすべく、活動している団体からペットを引き取った人に対して、ワクチン接種といった引き取りに要した費用を支給するという活動。加えて、1件の引き取り成立につき150ドル、最大1,100,000ドルの寄付を動物愛護団体に対して行うというのですから、太っ腹です。
この里親支援CSR活動、期間が感謝祭(11月の第4木曜日)翌日であるブラック・フライデーから翌月曜日のサイバー・マンデーまでの4日間限定であるのも特徴です。この期間は、アメリカでの年末商戦の皮切り。家族へのプレゼントとしてペットを…と考えている人に向けて、「新しいペットを買うよりも、施設で死を待つ命を助けませんか」と呼びかけるもので、さすがザッポスな訴求力です。
ザッポスは他にも、社員が取れるPaid Volunteer Time Off、すなわち有給ボランティア休暇の事例でも有名。社員は地域活動への参加を積極的に奨励されています。
「魚をあげればその人は1日食べられる。魚の釣り方を教えてあげれば一生食べられる」とは、恵まれない人の支援事業に当たってよくいわれることですが、それを実践しているのがメガネのネット販売会社Warby Parkerです。お手頃価格と充実したカスタマー・サービスで、口コミ・SNSによるシェアを通じファンを増やしているWarby Parker、CSR活動もネットワーク的です。
Warby Parkerが非営利団体と提携して行っているのは、「メガネが1つ売れるごとに、途上国で1つを格安販売する」という活動。特徴は、「途上国の人にメガネをあげる」のではなく、「途上国の人にメガネの売り方の研修を施し、自社製品を商品として破格の値段で提供する(卸す)」という点です。援助の受け手に「どのメガネが売れるか」というビジネス意識を持たせることによって、メガネ販売網を持続可能な形で現地に構築することを企図しています。
視力の改善は、QOL(クオリティ・オブ・ライフ、生活の質)や仕事の生産性、ひいては収入の向上にも通じるものです。先進国に住む人間には意識されにくいことですが、途上国におけるメガネ流通ネットワークの整備は、ビジネスを超え、公衆の保健という意味で重要なもの。その点に着目した上で、かつ「役立つだけでなく、着けてうれしいメガネ」を提供するとうたうところに、「着けた姿をシェアしたくなる」というファンの声を強みに成長してきたWarby Parkerらしさがうかがえます。
世界的な電機メーカー、Samsung。CSR活動も数多く行っていますが、中でも機転と太っ腹度で話題となった事例が「自撮り写真リツイート寄付」です。
世界の注目を集める映画賞、アカデミー賞の会場で、2014年、記録的なリツイート数を記録するセルフィー(自撮り写真)が撮られました。会場にいた超有名俳優・女優が10名以上収まったそのセルフィーは、司会を務めたエレン・デジェネレスによってツイートされ、300万回以上リツイートされました。
これに即座に反応したのが、アカデミー賞スポンサーのSamsung。1リツイートに対し1ドルという計算で、300万ドルを慈善事業へ寄付すると発表しました。撮影に使われた自社製品を際だたせるという意味でもインパクト大、大いに話題を集めるCSR活動事例となりました。
Airbnbは米国に拠点を置く、全世界規模の宿泊施設サイト運営会社。部屋を貸したい人と借りたい人をつなぐユニークなビジネスモデルとして注目を集めています。
AirbnbのCSR活動として特筆すべきなのは、その迅速さ。パリで2015年11月13日夜に起きた同時多発テロ事件の後、同社サイトには速やかに「2015年11月13日から17日まで」この事件に影響された人々の宿泊に対する料金請求を放棄する旨が表示されました。事件当時は、家族を探す人々がパリ入りしただけでなく、検問のため足止めを食った人も多かったので、Airbnbのこの措置は役立ったことでしょう。
化粧品の世界的な大企業L’Oreal。美と健康というイメージが強い業種であるだけに、クリーンエネルギーや廃棄物削減などのCSR活動にも積極的ですが、その中でもいかにもL’Orealらしいのが人工皮膚の開発です。
化粧品は肌に直接着ける商品だけに、開発段階で厳しい品質検査が行われます。そのために実施される動物実験は、愛護団体から強い非難を受け、化粧品業界を悩ませる問題となってきました。それを解決したのがL’Orealの人口皮膚です。その人工皮膚を病院にも提供し、火傷を負った患者の皮膚移植に役立てているのも、肌の美と健康を追求する企業らしいCSR活動事例です。
オンライン・アンケートを実施できるソフトウェアやアンケート結果の解析サービスなどを提供している、クラウドベースの企業Survey Monkey。この会社のユニークなCSR活動は、アンケートを記入してくれた人に対する報酬が「寄付行為」である点です。
一般的なアンケートだと、回答者は謝礼として金銭や品物を受け取るもの。しかしSurvey Monkeyのオンライン・アンケートでは、そのようなものは提供していません。その代わり、全て記入されているアンケート1件につき50セントの寄付をSurvey Monkeyが行うのです。寄付の総額は、2013年には100万ドル以上だったとか。
多様なサービスがあふれている現在、いろいろな手続きをして薄謝をもらうより、「いい行いをした!」と思うだけで終わった方がいい、そういう人も多いのかもしれませんね。他社との差別化の一事例となりそうです。
中国を抜いて世界で最も人口が多い国になる見通しの大国、インド。経済成長も著しく、日本との経済交流もいっそうの活発化が見込まれています。そのインド政府は世界の国々の中で初めて、企業に対しCSR活動を法律で義務づけました。具体的には、総利益の2%をCSR活動に使わなければいけないとなっています。
何がCSR活動に含まれる何が含まれないか、ガイドラインまで設定されたこの施策、他国への展開も期待されます。
企業の顔ともなり得るCSR活動。話題となるような事例を見ると、自社製品をアピールしている訳ではないのに、何となくその企業の「キャラクター」が見えてきませんか。個々の顧客がSNSで口コミを広める現代に求められているのは、こういうさり気ないアピールなのかもしれません。
参照:
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