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平成30年度のキャリアアップ助成金変更を解説!

キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者の正規雇用社員等への転換などキャリアアップへの施策を行った場合に行われる助成金です。そんなキャリアアップ助成金の制度が、平成30年4月1日から変更される予定であることを知っていますか? 今回は、キャリアアップ助成金の平成30年度改正の内容について解説していきます。

キャリアアップ助成金とは

厚生労働省が主導するキャリアアップ助成金とは、企業内における非正規雇用労働者の正社員化、人材育成、処遇改善等を促し、より成長し充実したキャリアの形成を可能にするための取組みです。そのようなキャリアアップのための施策を行っていると認められた企業には、中小企業と大企業別に8種類あるコースの内から当てはまるものに応じた助成金が支給されます。平成28年度の施行から様々な点で修正がなされており、今年度も予算の成立と雇用保険法施行規則の改正を見越した上で、予測される変更点がすでに公示されています。以下では、まず前提となる用語の解説を行った後、今回の改正における変更点を中心に見ていきます。変更の無い点については、厚生労働省ウェブサイトに掲載されている「キャリアアップ助成金パンフレット」に変更前の全容が記載されているため、申請の可能性がある方はそちらも参考にして下さい。

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キャリアアップ助成金の基本用語

  • キャリアアップ計画
    キャリアアップ助成金を申請するためには、具体的なコースの実施に先立ってキャリアアップ計画を管轄労働局長へ提出し、認定を受ける必要があります。労働組合など、労働者側の代表からの意見を聞き、計画の対象者、目標、期間、方法を明記しなくてはなりません。詳細については、上掲パンフレット中の「有期契約労働者等のキャリアアップに関するガイドライン」(以下ガイドラインと表記します)の規定を参照してください。
  • キャリアアップ管理者
    有期契約労働者等の非正規雇用労働者のキャリアアップに取組むにあたり、事務所ごとに、必要な知識と経験を持つと認定できる者をキャリアアップ管理者として任命し、管理体制の整備に当たらせます。こちらの定義も、ガイドラインで規定されています。
  • 生産性要件
    キャリアアップ助成金の受給時に、キャリアアップ計画の目標達成に加えて生産性要件も満たしている場合には、支給額が増額されるというものです。ここでいう生産性は具体的な数値によって表され、営業利益、人件費、減価償却費、動産・不動産賃借料、租税公課要件の総計を、日雇労働被保険者や短期雇用特例被保険者を除いた雇用保険被保険者数で割ることによって求められます。直近の会計年度における生産性が、3年前に比べ6%以上伸びているか、金融機関から一定の事業性評価を得た上で3年前に比べて1%以上(6%未満)伸びていれば、生産性要件を満たすことになります。
  • 有期契約労働者
    期間を予め規定した上で労働契約を締結する労働者を指します。短時間労働者と派遣労働者であっても、契約上に雇用期間の取決めがある場合にはここに含まれます。
  • 短時間労働者
    1週間の所定労働時間が、同じ事業所の通常の労働者よりも短い労働者を指し、企業によって名称は異なりますが、いわゆるパートタイム労働者のことです。
  • 派遣労働者
    労働者派遣事業者から派遣された労働者で、派遣先の企業と直接雇用関係を結ぶ予定のない者を指します。
  • 正規雇用労働者
    雇用期間の定めのない労働契約を交わしており、派遣労働者ではない者、つまり正社員を指します。無期の契約であっても、勤務地、職務あるいは労働時間の面での限定が契約で定められている場合は、「多様な正社員」として区別されます。

 

変更点に関係するコース

それでは、今回の改正で変更が見込まれる正社員化コース、人材育成コース、賃金規定等共通化コース、諸手当制度共通化コースについて、変更後の内容を解説していきます。なお以下の説明において、最初に提示する金額は中小企業に対するもので、続いてカッコ内に示すものが大企業への支給額となっています。

正社員化コース

有期契約労働者等を正規雇用労働者等に転換して雇用するか、または直接雇用する場合には、助成金が支給されます。代表的な助成として、次のものが挙げられます。

  • 有期契約労働者を正規雇用労働者や正社員へ転換する場合、1人当たり57万円、生産性要件を満たして72万円(42万7,500円、生産性要件を満たして54万円)
  • 有期契約労働者を無期契約労働者へ転換する場合、1人当たり28万5,000円、生産性要件を満たして36万円(21万3,750円、生産性要件を満たして27万円)
  • 無期契約労働者を正規契約労働者や正社員へ転換する場合、1人当たり28万5,000円、生産性要件を満たして36万円(21万3,750円、生産性要件を満たして27万円)
  • 有期または無期の契約労働者を正規雇用労働者や正社員へ転換するに際して、派遣労働者を派遣先で正規雇用労働者や正社員として直接雇用した場合、1人当たり28万5,000円加算、生産性要件を満たして36万円を加算(28万5,000円、生産性要件を満たして36万円)

この他にも、母子家庭など特別な条件下で更なる支給額の加算が発生します。
平成30年度の改正による変更点としてはまず、1年度につき1事業所あたりの支給申請上限人数が15人から20人に拡充されます。次に、支給に関する要件が2点追加されます。1点目は、正規雇用労働者等への転換によって、転換前の6か月と転換後の6か月の賃金総額を比較して5%以上増額していることで、この際、賞与と諸手当を含めた賃金を基に計算しますが、通勤手当、時間外労働手当、歩合給等などは除外されます。第2に、有期契約労働者からの転換に関して申請する際には、転換前に事業主で雇用されていた期間が3年以下に限るという条件がつきます。

人材開発支援助成金(旧人材育成コース)

現行制度における人材育成コースは、人材開発支援助成金という別の制度への統合が予定されています。ただし、平成30年3月末日までに訓練計画届の提出がなされている場合であれば、引き続き人材育成コースの支給を申請することができます。以下は、現行の人材育成コースの概要となりますが、新制度の人材開発支援助成金の詳細については厚生労働省のウェブサイトをご参照ください。

現行の人材育成コースでは、有期契約労働者等に対し、実務を離れて行う一般職業訓練(Off-JT)か、実務の中で行う訓練(OJT)とOff-JTを組み合わせた3~6ヶ月の有期実習型訓練を実施した場合に助成金が支給されます。

Off-JT分の支給額は、賃金助成として1人1時間当たり760円、生産性要件を満たして960円(475円、生産性要件を満たして600円)が支給され、さらに経費助成として1人当たり訓練時間数に応じた一定額が支給されます。

対してOJT分の支給額は、実施助成として1人1時間当たり760円、生産性要件を満たして960円(665円、生産性要件を満たして840円)が支給されます。

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賃金規定等共通化コース

有期契約労働者等に関して、正規雇用労働者と共通の職務等に応じた賃金規定などを作成し適用した場合に助成金が支給されます。1事業所につき57万円、生産性要件を満たして72万円(42万7,500円、生産性要件を満たして54万円)が1回のみ支給されます。今回の改正により、2人目以降の対象労働者1人当たりに対して20,000円、生産性要件を満たして24,000円(15,000円、生産性要件を満たして18,000円)がさらに加算されるようになる見込みです。ただし、申請できる上限人数は20人となっています。

諸手当制度共通化コース

有期契約労働者等に関して、正規雇用労働者と共通の諸手当制度を新たに設置し適用した場合に助成金が支給されます。1事業所につき38万円、生産性要件を満たして48万円(28万5,000円、生産性要件を満たして36万円)が1回のみ支給されます。変更後、こちらは人数に加え、手当の数に対しても加算措置が取られるようになる予定です。2人目以降には1人当たり15,000円、生産性要件を満たして18,000円(12,000円、生産性要件を満たして14,000円)が、2つ目以降の手当には1つ当たり160,000円、生産性要件を満たして192,000円(120,000円、生産性要件を満たして144,000円)が支給額に上乗せされます。

 

まとめ

今回はキャリアアップ助成金の変更点を中心に紹介してきましたが、これらはあくまで平成30年度予算の成立ならびに雇用保険法施行規則の改正を前提とした予定にすぎず、今後さらに変更が加えられる可能性があることを再度強調しておきます。キャリアアップ助成金は年度毎に変更が発生するため、正確に把握することは必ずしも容易ではありません。しかし利用できる状況にあるにもかかわらず支給申請しないことはもったいないので、常に情報収集を怠らず、素早く変更に反応できることが重要であると言えます。

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