キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者の正規雇用社員等への転換などキャリアアップへの施策を行った場合に行われる助成金です。そんなキャリアアップ助成金の制度が、平成30年4月1日から変更される予定であることを知っていますか? 今回は、キャリアアップ助成金の平成30年度改正の内容について解説していきます。
厚生労働省が主導するキャリアアップ助成金とは、企業内における非正規雇用労働者の正社員化、人材育成、処遇改善等を促し、より成長し充実したキャリアの形成を可能にするための取組みです。そのようなキャリアアップのための施策を行っていると認められた企業には、中小企業と大企業別に8種類あるコースの内から当てはまるものに応じた助成金が支給されます。平成28年度の施行から様々な点で修正がなされており、今年度も予算の成立と雇用保険法施行規則の改正を見越した上で、予測される変更点がすでに公示されています。以下では、まず前提となる用語の解説を行った後、今回の改正における変更点を中心に見ていきます。変更の無い点については、厚生労働省ウェブサイトに掲載されている「キャリアアップ助成金パンフレット」に変更前の全容が記載されているため、申請の可能性がある方はそちらも参考にして下さい。
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それでは、今回の改正で変更が見込まれる正社員化コース、人材育成コース、賃金規定等共通化コース、諸手当制度共通化コースについて、変更後の内容を解説していきます。なお以下の説明において、最初に提示する金額は中小企業に対するもので、続いてカッコ内に示すものが大企業への支給額となっています。
有期契約労働者等を正規雇用労働者等に転換して雇用するか、または直接雇用する場合には、助成金が支給されます。代表的な助成として、次のものが挙げられます。
この他にも、母子家庭など特別な条件下で更なる支給額の加算が発生します。
平成30年度の改正による変更点としてはまず、1年度につき1事業所あたりの支給申請上限人数が15人から20人に拡充されます。次に、支給に関する要件が2点追加されます。1点目は、正規雇用労働者等への転換によって、転換前の6か月と転換後の6か月の賃金総額を比較して5%以上増額していることで、この際、賞与と諸手当を含めた賃金を基に計算しますが、通勤手当、時間外労働手当、歩合給等などは除外されます。第2に、有期契約労働者からの転換に関して申請する際には、転換前に事業主で雇用されていた期間が3年以下に限るという条件がつきます。
現行制度における人材育成コースは、人材開発支援助成金という別の制度への統合が予定されています。ただし、平成30年3月末日までに訓練計画届の提出がなされている場合であれば、引き続き人材育成コースの支給を申請することができます。以下は、現行の人材育成コースの概要となりますが、新制度の人材開発支援助成金の詳細については厚生労働省のウェブサイトをご参照ください。
現行の人材育成コースでは、有期契約労働者等に対し、実務を離れて行う一般職業訓練(Off-JT)か、実務の中で行う訓練(OJT)とOff-JTを組み合わせた3~6ヶ月の有期実習型訓練を実施した場合に助成金が支給されます。
Off-JT分の支給額は、賃金助成として1人1時間当たり760円、生産性要件を満たして960円(475円、生産性要件を満たして600円)が支給され、さらに経費助成として1人当たり訓練時間数に応じた一定額が支給されます。
対してOJT分の支給額は、実施助成として1人1時間当たり760円、生産性要件を満たして960円(665円、生産性要件を満たして840円)が支給されます。
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有期契約労働者等に関して、正規雇用労働者と共通の職務等に応じた賃金規定などを作成し適用した場合に助成金が支給されます。1事業所につき57万円、生産性要件を満たして72万円(42万7,500円、生産性要件を満たして54万円)が1回のみ支給されます。今回の改正により、2人目以降の対象労働者1人当たりに対して20,000円、生産性要件を満たして24,000円(15,000円、生産性要件を満たして18,000円)がさらに加算されるようになる見込みです。ただし、申請できる上限人数は20人となっています。
有期契約労働者等に関して、正規雇用労働者と共通の諸手当制度を新たに設置し適用した場合に助成金が支給されます。1事業所につき38万円、生産性要件を満たして48万円(28万5,000円、生産性要件を満たして36万円)が1回のみ支給されます。変更後、こちらは人数に加え、手当の数に対しても加算措置が取られるようになる予定です。2人目以降には1人当たり15,000円、生産性要件を満たして18,000円(12,000円、生産性要件を満たして14,000円)が、2つ目以降の手当には1つ当たり160,000円、生産性要件を満たして192,000円(120,000円、生産性要件を満たして144,000円)が支給額に上乗せされます。
今回はキャリアアップ助成金の変更点を中心に紹介してきましたが、これらはあくまで平成30年度予算の成立ならびに雇用保険法施行規則の改正を前提とした予定にすぎず、今後さらに変更が加えられる可能性があることを再度強調しておきます。キャリアアップ助成金は年度毎に変更が発生するため、正確に把握することは必ずしも容易ではありません。しかし利用できる状況にあるにもかかわらず支給申請しないことはもったいないので、常に情報収集を怠らず、素早く変更に反応できることが重要であると言えます。
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