企業が人員を雇う際に必要不可欠な労働保険ですが、例年6月1日〜7月10日の期間中に年度更新をする必要があります。
今回は、労働保険がどのような保険か、また労働保険の年度更新に必要なこと、注意点について詳しく解説します。
労働保険とは、労働者災害補償保険(労災保険)と雇用保険の2種類の社会保険の総称です。以上の保険は給付などにおいては別々に取り扱われますが、保険料の徴収は、「労働保険」として一体にて取り扱われています。
労働者を守る保険である労働保険は、一部の農林水産業以外の全ての事業について、1人でも雇用している従業員がいれば適用対象となり、保険料を納付しなければなりません。
労働保険の保険料は、以下で計算されます。
・ 労働保険料 = 労災保険料 + 雇用保険料 + 一般拠出金
アスベスト健康被害救済のために全事業主に課される一般拠出金は、総賃金に一般拠出金率を乗じることで算出され、2017年度においては、一般拠出金率は0.02 / 1000となっています。
以下では、労災保険と雇用保険について詳しく解説してきます。
労災保険は以下のような事態が発生した場合、保険金の給付が行われます。
以上のような業務上の災害と認められる事態が起こってしまった場合、特に中小企業では、企業や企業の経営責任者だけで全ての責任を負うことが難しくなります。その備えとして労災保険料を支払うことで、被災労働者とその親族の保護および社会復帰支援の実現に繋がります。
労災保険の保険料は、その従業員に支払われる報酬・手当等のすべての賃金に対して、保険料率をかけることによって求められ、その全額を企業(事業主)が負担することとなります。保険料率は業種によってそれぞれ異なるため、どの税率が適用されるかについては、厚生労働省HPにて一度確認しましょう。
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雇用保険は、労働者の生活と雇用の安定化、就職の促進のための保険制度で、例として以下のようなものが含まれます
一般的には失業時の臨時手当というイメージがありますが、求職者手当に加え、育児・介護休業手当等を含む雇用継続手当など、雇用に関して総合的に保障する保険制度となっており、快適な就業環境を整えるためには必要不可欠な保険制度です。また、以前は対象外だった65歳以上についても、2017年1月1日より雇用保険の対象となりました。
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雇用保険の保険料は、労災保険と同様、その従業員に支払われる報酬・手当等のすべての賃金に対して保険料率をかけることによって求められます。しかし、雇用保険は労災保険とは異なり、従業員本人も保険料を一部負担することとなります。
労災保険の場合と同様、保険料率は業種によって異なります。以下の表に示しているのは、2017年度を例とした雇用保険料率です。
事業主負担分 | 従業員負担分 | 保険料率 | |
一般の事業 | 6 / 1000 | 3 / 1000 | 9 / 1000 |
農林水産・清酒製造業 | 7 / 1000 | 4 / 1000 | 11 / 1000 |
建設の事業 | 8 / 1000 | 4 / 1000 | 12 / 1000 |
労働保険は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間を「保険年度」して保険料が算定されます。保険料の納付にあたって、保険料を概算する手続きが例年6月から7月にかけて行われ、その上で差額を精算するという流れがとられています。この保険料の概算手続きを、労働保険の「年度更新」と呼びます。
年度更新では、以下の手続きが必要となります。
「概算保険料」とは、当年度に支払うだろうと予想される保険料を、前年度の保険料をもとに概算したものをいいます。年度更新においては、概算保険料を前払いで支払う必要があります。
前年度に従業員に支払った総賃金に基づいて算定された保険料を「確定保険料」といい、年度更新において申告する必要があります。その際には、前年度に納付した概算保険料との差額について精算し、超過分に関しては概算保険料からの減算が可能となります。
年度更新を行うには、更新が必要な各企業に送付されてくる申告書への確定保険料・一般拠出金額や概算保険料等の記入が必要となります。
申告書記入にあたって、まずは従業員に支払った総賃金を記入して「確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表」を作成します。この集計表は保険料算出の基礎となるもので、申請後も事業場において保管しておく必要があります。
記入した申告書は、銀行・郵便局・労働基準監督署・労働局・労働保険徴収事務センターのいずれかに持ち込むか、郵送によって管轄の労働基準監督署あるいは労働局に提出することも可能です。申告書の事業主控は提出後も保存しておきましょう。
定められた短い期間の間に手続きを行わなければならない年度更新ですが、手続きが遅れてしまうと政府によって保険料が決定され、納付すべき金額の10%を追徴金として課されてしまいます。加えて、申告額が誤っていた場合についても、不足額とともに不足額の10%が追徴金として課されます。
年度更新の手続きについては、厚生労働省HPにて詳細が記載されていますので、正確な計算のもとくれぐれも期間内に申請を行うよう心がけましょう。
労働保険は従業員の万一の場合に備えるために必要不可欠な制度であり、保険料の納付はしっかりと行わなければなりません。短い期間で手続きを行わなければいけないため、日頃から準備を怠らず、追徴金を避けるためにも正確な申告を行いましょう。
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