2019年4月より労働条件通知書の電子化が解禁されます!

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公開日:2018.12.7

2019年4月より労働条件通知書の電子化が解禁されます。雇用契約書と労働条件通知書は兼用されることが多いですが、雇用契約書は電子署名でも可能なため、電子媒体で雇用契約を締結した後に紙で労働条件通知書を交付するという二度手間が問題視されていました。電子化解禁により、この問題は解消されることとなります。今回は、規制緩和の内容と労働条件通知書の交付方法について解説していきます。

労働条件通知書とは

概要

労働条件通知書とは、会社と労働者が雇用契約を結ぶ際に、通知する義務のある事柄などについてまとめられたもので、労働基準法上の労働条件の明示に準拠します。この通知義務のある事柄には、原則として以下のものが挙げられます。

  • 契約期間、更新の基準
  • 就業場所
  • 業務内容
  • 始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩・休日・休暇、シフトやローテーションの基準等
  • 賃金の計算、支払い、昇給の基準等(昇給の明示については条件により免除あり)
  • 解雇、退職の基準等

またこれらに加えて、安全衛生や職業訓練など、法的な通知義務はないものの、社内で規定が設けられている場合には通知される事柄もあります。会社は労働条件通知書を労働者に必ず交付しなければならず、この際しばしば雇用契約書と共に配布されます。

雇用契約書との違い

労働条件通知書は労働者に交付する必要があるのに対し、雇用契約書の場合は作成されないこともあります。これは、契約自体は当人達の意志が尊重されるので締結が明示されなくても成立しますが、契約内容については、弱い立場にある労働者を守るという目的から、労働条件を明確にすることが雇用者に義務付けられているためです。また、会社が労働者へ一方向的に配布する労働条件通知書と異なり、雇用契約書の場合は、お互いが合意の基に捺印するという手順が踏まれることが一般的です。

今までの問題

そもそも労働条件通知書の配布形式については、厚生労働省の管轄下にあります。これは、労働基準法の第15条1項により、労働者への労働条件の通知について、厚生労働省令で定められた方法で明示する旨が取り決められているからです。この厚生労働省令には労働基準法施行規則が該当し、同規則の第5条3項には、労働条件通知書の交付は書面で行うものと明記されています。他方、雇用契約書にはこのような規制が存在せず、電子メールやファクシミリでの配布が承認されています。ここで問題となるのが、前述のように雇用契約書は労働条件通知書と同時、もしくは両方を兼ねた形式の書類で渡される傾向があることです。しかし両者にはこの形式上の規制の差があるために、本来なら1度で同時に提供できた2つの書類を、電子上と紙面上で別々に渡す、もしくは結局どちらも紙面上で渡すはめになるという手間が発生していました。そこで、このちぐはぐさと面倒を取り除き、二度手間を解決するものと目されているのが、今回の労働条件通知書の電子化解禁です。

 

規制緩和の内容

2019年4月より、書面での通知に代わり、労働条件通知書を電子上で配布することが可能になります。具体的には、労働基準法施行規則の第5条には新たに4項が加えられ、労働者側が望んだ場合は、次の2つの手段のどちらかによる配布が承認されることになりました。

  • ファクシミリを用いる送付
  • 電子メールなど、特定の者しか受信できない電気通信による送付

 

電子交付の方法

手順

労働条件通知書には決まった書式はなく、参考例については、厚生労働省のウェブサイトにてダウンロードすることができます。こうした様式に準ずる形に体裁を整えて作成した後、ファクシミリもしくは電子メール等の電子通信に耐える形式で、労働者に送付します。

内容

前述の通り、労働条件通知書には記載する義務のある事柄と、規定がない場合には記載しなくてもよい事柄があり、前者は必ず明示しなくてはなりません。

注意が必要なポイント

労働条件通知書を電子上で配布する際には、必ず押さえなくてはならないポイントが3点あります。これらに反する形で通知が行われた場合、契約の解除や罰金といった事態につながる可能性もありますので、注意が必要です。

  • 電子上で送付するためには、労働者側の意志や希望が必要であること
    労働条件通知書を渡すにあたって、会社側から一方的に電子メール等で送りつけることは許されないため、どの形式を望むのかについて、労働者側の意向を確認する必要があります。また、もし書面と言われた場合は、手間がかかっても印刷し紙面の形で渡すことになります。
  • 労働者側にとって、書面に印刷できる形でなくてはならないこと
    会社側だけでなく労働者側でも印刷できる必要があるため、どのような電気通信を用いるかには、場合によっては注意が必要になります。特定の電子デバイス上でしか見られないもの、印刷を前提としていないもの、期限が過ぎると閲覧できなくなるものなど、状況によっては省令違反とみなされる可能性があるもの考えられます。
  • 受信を特定の者に限る電気通信による送付であること
    ウェブサイト上などで第三者がアクセスできるところにアップロードすることや、不特定多数での共有を前提とするファイルなどに入れておくことは、違反とみなされる可能性が高くなります。

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まとめ

ITシステムや通信技術は日進月歩で、その流れに制度も対応しないわけには行きません。今後もこうした電子化解禁の動きは増加することがみこまれます。より効率的な業務の遂行のためにも、労働条件通知書の電子化解禁を含め、こうした変化を逐一把握しておくことが重要と言えます。

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