オフィスの防犯はコンピューターのネットワークセキュリティのみではなく、オフィスそのものの防犯対策を行う必要があります。オフィスにはパソコンなどの高価な機器や機密情報、個人情報など持ち出されては困るものが多く、防犯対策はとても重要です。今回はオフィスで起こる犯罪と、オフィスの防犯対策について解説していきます。
オフィスで起こる犯罪
オフィスは、一戸建てやマンションなどの住宅に次いで泥棒に狙われやすいといわれています。事実、警察庁によれば2017年に侵入窃盗の被害に遭った場所のうち、住宅全体は57.3%を占め、次点でオフィスや事務所への侵入が13%となっています。あまり知られてはいませんが、オフィスが犯罪の標的とされることは意外に多いことがわかります。
オフィスが狙われる理由
オフィスが狙われる大きな理由は、侵入の容易さにあります。特に、オフィスがビジネス街にあれば、夜間や休日は閑散とし、ビル内にもほとんど人がいなくなるため、人目を避けての侵入がしやすくなります。特にテナントビルの場合は、人の出入りが自由であることも多いので怪しまれずに侵入でき、また、ひと度侵入すれば複数のオフィスを狙えるというのも、泥棒にとっては魅力的でしょう。さらに、オフィスの鍵は複数人が持っているので、元従業員が合鍵を使用して侵入するというケースもあります。
オフィスで狙われるもの
泥棒が狙うのは、現金だけとは限りません。まず、複数犯で金庫を盗むという手口があります。この場合、たとえ現金が入っていなくても、株券、手形、小切手などの金銭的価値があるものが盗まれてしまいます。
次に、パソコンやノートパソコンなどのOA機器は、泥棒にとっては、機器と情報の両面で2重の旨みがある標的となっています。機器という観点では、ネットオークションなどを使えば、パソコンなどの機器それ自体が中古品として比較的高値で売れます。情報という観点では、パソコンのハードディスクに保存されている大量の情報を取り出せば、名簿業者等に売ることができます。特に、顧客リストやマイナンバーといった個人情報や重要書類が狙われます。企業としては、顧客の個人情報などが流出してしまうと賠償金を請求される可能性もあり、社会的信用の損失も含めた多大な被害を受けることになるでしょう。
プロの窃盗団に侵入されてしまうと、最悪の場合、目につく物はすべて持ち出されることもあり得ます。さらに、何も盗むものがなくてもオフィスに放火して逃げ去るという悪質な例すらあります。このように、オフィスを標的とする犯罪には、現金やものが盗まれるだけでなく、情報が流出したり、オフィスそのものがなくなってしまったりと、大きな危険があるのです。
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オフィス防犯対策
それでは、どのようにしてオフィスの防犯対策をすればいいのでしょうか。オフィスが自社ビルの場合とテナントビルの中にある場合とでは、採るべき方法も異なります。どちらの場合にもできる対策と、それぞれの場合にできる対策の3パターンを見ていきましょう。
共通でできる対策
- パソコンはID・パスワードを設定しておく。
- ビルの入口に、受付・電気錠・オートロック・2重ロック・入退出管理システムなどを設置し、人の出入りを管理する。
- ビルの出入口、非常階段、エレベーターホールなど、人の出入りが多い箇所に監視カメラを設置する。エレベーター内にも監視カメラ、非常用押しボタンなどを設置する。
- 非常階段、非常口の電気錠は通常時には施錠しておき、非常時以外は侵入できないようにしておく。また、オートロックシステムを導入する。
- 金庫には「耐火金庫」ではなく「防盗金庫」を選ぶ。
- 金庫を床や壁にボルトで固定し、簡単に持ち出したり、こじ開けたりできないようにする。固定が難しい場合は、ベースボードという、金庫やキャビネットの下に敷いて取りつける防犯具を導入する。出入口よりも大きなベースボードにすることで、金庫を持ち去りづらくする。
- 金庫の中に音や振動に反応するアラーム装置を設置し、異常があれば音や光で警告し、同時に管理人室などに通報するシステムを導入する。
- 金庫の置いてある部屋にはオートロックシステムや電子錠を設置して入退室を管理し、防犯カメラも設置する。
- 防犯担当者を決めてセキュリティ対策を社内で検討し、社員に対する通達・教育を徹底することで、防犯意識を高める。
- ドアや窓には侵入検知センサーを設置し、自動通報できるようにしておく。また、窓には防犯ガラスを使用し、室内側に取り付ける通常の回転式のクレセント錠に加えて、防犯性を高める補助錠を設置する。
自社ビルの場合の対策
- 監視カメラを設置して、入退出の状況を録画する。
- 建物外周警戒システムを導入し、社員の減る夜間や休日の敷地内への侵入を検知できるようにする。
- 受付などを置いて入退出を管理し、関係者以外の営業時間外の立入はできないようにする。
- こじ開けなどによる不法侵入を検知し、威嚇・自動通報するシステムを導入する
テナントビルの中にある場合の対策
- エントランスに入退出管理用のカードリーダーや鍵管理システムなどを設置し、営業時間外は関係者以外が専有部へ立ち入れないようにする。
- 各テナントに侵入検知センサーを設置し、不審者の侵入に対して威嚇・自動通報するシステムを導入する。警備員が常駐している場合は、どのテナントで異常が発生したのかを警備室内で即座に把握できるシステムを導入する。
- 新しいテナントへ移る際には、錠前の変更・入退出用のカードデータの消去などを必ず行う。
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まとめ
普段なかなか意識されることの少ないオフィスを標的とする犯罪ですが、オフィス空間は盗み出されると大きな危険を伴うもので満ちています。オフィスの防犯対策の重要性をしっかりと認識し、できるところから対策を講じていきましょう。