雇用調整助成金を活用して緊急時にも雇用を維持しましょう

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公開日:2018.8.10

景気の大幅な変動や産業構造の変化によって、事業規模を収縮せざるを得ない状況になってしまうことは珍しくありません。こうした時に従業員を解雇せずに雇用維持を図るための制度として、雇用調整助成金があります。雇用維持の意思を示すことで従業員の士気が高まり、景気回復後の事業展開にもつながります。今回は雇用調整助成金について、制度の概要と支給要件、手続き方法などについて解説していきます。

雇用調整助成金とは

すべての企業は経済全体の枠組みの中で活動しており、時として個々の企業の努力とは別次元の経済的潮流による影響を被ることになります。日本は世界的に見ても解雇が難しい国で、景気が悪くなったからと言って従業員を簡単に解雇することができません。しかし不況のなかで無理に雇用を維持すれば、企業全体の業績にも響くことになります。そのため各企業は、事業活動の縮小期には残業規制や配置転換などによって雇用調整を行います。こうした措置のうち、働く意思と能力のある従業員の休業、スキルアップのための教育訓練、または他の事業所への出向に関しては、「雇用調整助成金」の支給を申請することで、雇用維持を行うための経済的支援を国から受けることができます。

助成金額

大企業であれば、この助成金制度で以下の助成を受けることができます。

  • 休業を実施した場合の休業手当、教育訓練を実施した場合の賃金相当額、または出向を行った場合の出向元事業主の負担額の2分の1
  • 教育訓練を行った場合は1人につき1日あたり1,200円加算

中小企業の場合は、この助成金で以下の助成を受けることができます。

  • 休業を実施した場合の休業手当、教育訓練を実施した場合の賃金相当額、または出向を行った場合の出向元事業主の負担額の3分の2
  • 教育訓練を行った場合は1人につき1日あたり1,200円加算

支給要件

支給対象となるには、雇用保険の適用事業所であり、それぞれの労働者が雇用保険の被保険者である必要があります。ただし、休業開始前の賃金の締め切り日、あるいは出向を開始する日の前日までに、同一の事業主に引き続き雇用された期間が6か月未満である労働者等は対象となりません。

また、業績の悪化やそれによる従業員の扱いについても、以下の条件を満たす必要があります。

  • 最近3か月の生産量、売上高などの生産指標が、前年同期と比べて10%以上減少していること。
  • 雇用保険被保険者となる従業員の数および受け入れている派遣労働者数の最近3か月間の月平均値が、前年同期と比べて一定数以上増加していないこと。具体的には、大企業の場合は5%を超えてかつ6人以上、中小企業の場合は10%を超えてかつ4人以上人数が増えていないことが必要です。
  • 実施する休業、出向、教育訓練が労働者の代表と使用者の間で事前に話し合われ、その話し合いに基づく労使協定に基づくものであること。これを示すために協定書の提出が必須となっています。

他にも、「クーリング期間」の間に助成金を引き続き申請することはできません。クーリング期間とは、雇用調整助成金の支給対象期間が満了する日の翌日から起算して1年以内のことで、したがって2つの助成期間の間は1年以上空いていなければなりません。

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手続き方法

雇用調整の計画

休業を行う場合は、どのくらいの期間、どの部門で、何名休業するのか、また休業の対象となる労働者の選定はどのように行うのか、さらにその労働者の選定方法に偏りはないかどうかを検討し、計画を立てます。

事業所内で教育訓練を行う場合は、支給申請時に従業員が教育訓練を受けたことを証明するために、受講者が作成したレポートの提出が必要です。そのため、レポートを書いてもらうことまで検討した上で計画を立てましょう。なお、助成金の対象は事業所内での教育訓練だけでなく、事業所内で教育訓練を行うのが困難である場合は外部の機関に教育訓練の実施を委託することもできます。

出向の場合、出向させられる労働者に対して労働条件が明示されている必要があります。また、出向元の事業所は、自社の労働者からなる労働組合などとの間で出向協定を結ばなければなりません。

計画届

雇用調整の計画に基づき作成した計画届を都道府県労働局やハローワークに提出します。休業、教育訓練、出向の場合で提出の必要な書式が異なりますので、それぞれの措置に合った方法で申請するように気をつけましょう。

雇用調整の実施と支給申請

支給申請に必要な書類についても、休業、教育訓練、出向の場合で書式が異なりますので、それぞれの措置に合った方法で申請しましょう。休業と教育訓練の場合は、対象労働者の労働日・休日、または休業・教育訓練の実績を確認するための「出勤簿」や「タイムカード」も提出しなければなりませんから、日頃から適切な記録を付けておきましょう。出向の場合は、出向元事業主と出向先事業主の間で賃金をどのように負担しているかによって必要書類が異なりますので注意しましょう。

申請の締め切りは支給対象期間の末日の翌日から2か月後となっています。ただし、申請対象期間の最後の日が行政機関の休日である場合は、その翌日が締切日です。なお、助成金の手続きのために提出した書類は、支給の決定から5年間の保存義務があります。

 

まとめ

従業員を解雇せずに、休業、教育訓練、出向を通じて雇用維持を図るための制度として、雇用調整助成金があることをご紹介しました。雇用維持は景気回復後の事業の展開にもつながるため、長期的な展望の下で最適な手段を判断することが重要です。助成金を適切なタイミングで活用し、企業にとって苦しい時を乗り越えましょう。

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