環境保護や働き方の多様化に注目が集まる中、多くの企業においてペーパーレス化が進められています。
今回は、ソニービジネスソリューション株式会社デジタルペーパー事業推進室の北島秀明さんにインタビューを行い、ソニーが開発したデジタルペーパーの導入を通じた、企業のペーパーレス化と業務効率の向上について、お話を伺いしました。
ミーティングの効率アップなど、労働環境の整備を考えているバックオフィス担当者の方や、環境配慮施策の一環としてペーパーレス化を検討している経営者の方は必見です。
デジタルペーパーの製品紹介はコチラ。
目次
紙を「デジタル化」する意義
-はじめに、ソニービジネスソリューションのソニーグループ内での立ち位置について教えてください。
ソニービジネスソリューション株式会社は、ソニーのプロフェッショナルソリューション事業において、放送局や一般企業、スタジアム、映画館、官公庁、大学などに向けて、お客さまのニーズに合わせた映像ソリューションを提供しています。
具体的には、映像制作機材、ネットワークカメラ/防犯・監視システム、プロジェクター、会議を最適化させるコラボレーションシステムやビデオ会議システムなど、様々な商材を取り扱っております。
その中でも今回ご紹介させて頂くデジタルペーパーは、ジャンルを問わず、紙を使っているすべてのビジネス現場での適用可能性を秘めていると考えています。
-デジタルペーパーの開発には、どのような経緯があったのでしょうか。
デジタルペーパーの開発のきっかけは、テレビ放送や映画館のデジタルフィルム導入をはじめとした、様々な分野でのデジタル化が進んできたことが背景にあります。
紙に関してもデジタル化したいという議論は以前からあったのですが、紙のままでも十分に安い、というコストメリットの観点が常にボトルネックとなっていました。しかし、2000年頃から社会の環境保護意識が徐々に盛り上がりを見せ、これを契機として2013年のデジタルペーパーのリリースに至りました。しかし、ここで開発した初版のデジタルペーパーには、その速度に難点がありました。
今回3年半ぶりにリリースした新作のデジタルペーパーでは、速度の改善に注力して開発を行い、結果としてスピード感を上げ、さらにはコストを下げることにも成功しました。
実情としてまだまだデジタルペーパーは世間に知れ渡ってはいませんが、以前からデジタルペーパーを愛用してくださっている方々からは、今回リリースしたデジタルペーパーに、非常に良い反応をいただいています。
紙へ限りなく近づけた、デジタルペーパーの「読み書き」機能
-デジタルペーパーの開発において、最もこだわった部分を教えてください。
最大の開発方針は、デジタルペーパーにおける「読み書き」を、可能な限り紙に近づけるということです。
「読み」の面では、目に優しい製品でありたいと考えています。世間に出回っているタブレットは、バックライトによって文字を発光させているのに対し、デジタルペーパーは紙と同じようインクを浮かせて文字を形成しています。そのため、タブレットなどの端末と比較すると、とても目に優しく、長時間使用にも耐えうる製品になっています。
「書き」の面では、社内で実際に書き心地の比較テストを何度も行い、現在の仕様に至りました。ペンとパネル表面の間の「書き味」は、人によって好みが分かれるため、鉛筆またはボールペンに近い2種類の芯をご用意しています。
また、ペンを当てた部分と実際に書かれる文字のずれである、「視差ずれ」が非常に少ないことが、デジタルペーパーの特長です。通常のタブレットでは、ガラスパネルが上に乗っていますが、デジタルペーパーはより薄いプラスチック樹脂のパネルを使用しているため、軽さと視差ずれの双方が改善されています。
このような「読み書き」へのこだわりが、開発のアイデアとしてタブレットと違う部分であり、より「紙に近い端末」を実現したポイントでした。
紙を使うすべてのビジネスシーンで、デジタルペーパーが活躍してほしい
-実際に、どのようなデジタルペーパーの活用方法を想定しているのでしょうか。
企業では、パソコンが使いにくく紙を使わなければならないような場面において、デジタルペーパーが役立ってほしいと思います。
例えば、紙で帳票を作成しボールペンで管理確認を行う作業が必要な現場においては、WordやExcelで帳票のフォーマットを作った後にデジタルペーパーに取り込むと、同じページを増やしていくことができるため、容量が許す限り同じフォーマットを何回も使うことが可能となります。
他にも、秘書の方など、常にメモ書きを要する業務の方がデジタルペーパーを利用すれば、後で検索するといった利用方法も期待できます。
お客様の声でデジタルペーパーが必要とされたのは―もしかしたら意外に感じる方もいるかもしれませんがー医療の現場でした。
例えば、初診で病院に行ったときに「問診票を書いてください」と言われたことは、誰もが経験があると思います。
この問診票記入にデジタルペーパーを使うなど、最終的にカルテにつながる情報を電子化することで、紙でスキャンして連携させるという煩雑な作業が必要なくなったそうです。
他にも、原稿の校正作業や大学の先生のレポート添削などでは、デジタルな文章入力よりも手書きの方が、より伝えたい気持ちやニュアンスが伝わると思います。このようなコミュニケーションが重視される場面において、デジタルペーパーが利用されることが理想的です。
しかし、現在はチャットをはじめとした簡単なコミュニケーションツールが主流となっているのも事実です。コミュニケーションに適していて、かつ手軽なデジタルペーパーが生まれたことで、手書きの良さを再認識してもらえたらとても嬉しいですね。
-デジタルペーパーが企業にもたらす効果について教えてください。
やはり、ペーパーレスを推進する企業においては、デジタルペーパーは大きな効果を発揮すると思います。
ペーパーレスの観点では、パソコンを使ったファイル共有などが一般的に行われています。しかし、会議の形態によっては、「ファイルを見ながらメモ書きをしたい」「会議中のメモをフィードバックしたい」、といったパソコンでは実現できない状況は多々生まれると思います。
このような要請に対し、タブレットを利用しようとする企業も多いですが、電池の耐久時間や書き心地という面を考えると、デジタルペーパーの方がより優れています。
また、ペーパーレス化はコスト面でも企業にメリットをもたらします。
紙を使った業務では、コピー代やコピーレンタル代、事務の方の工数、機密情報を含んだ紙をシュレッダーにかける費用など、様々な場面でコストが発生してしまいます。初期投資のみで、これらの費用がかからなくなることを考えると、デジタルペーパーの導入は非常にメリットだと思います。
デジタルペーパーで、新しいクリエイティブな会議形態を
-業務効率以外の部分でデジタルペーパーが役立つ場面はありますか?
デジタルペーパーが特に活躍する場面として、メンバーでアイデアを出し合い、ブレインストーミングを行うような会議形態が挙げられると思います。
絵や文字に関わらず考えを表現していく過程では、書き手の感情が伝わりやすい手書きの方が望ましく、最終成果物はデータですぐに共有することも可能です。
従来の紙では実現し得なかったこのようなスタイルの会議が生まれると、デジタルペーパーが開発された意義を非常に感じます。
最終的には、紙がなくなるくらいまでデジタルペーパーが普及することが、私たちの理想です。
編集後記
今回は、ソニービジネスソリューション、デジタルペーパー推進事業部の北島さんにデジタルペーパー開発の裏側や活用の方法など、貴重なお話を伺いました。
社内のペーパーレス化も目指しているものの、導入に踏み切れないという方は、是非一度デジタルペーパーに触れ、その性能を確かめてみてはいかがでしょうか。
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