【平成29年1月~】個人型確定拠出年金の加入者の範囲が拡大します

公開日:2016.11.7

1c76a3f20a4bc49bd75ff43f3387876c_s

確定拠出年金法の改正により、2017年1月から個人型確定拠出年金の加入者の範囲が拡大し、基本的に60歳未満のすべての人が個人型確定拠出年金に加入できるようになります。

これにより、従業員が個人型確定拠出年金に加入する場合、企業は事業所登録や企業型確定拠出年金規約の変更等の対応が必要となります。

今回は、個人型確定拠出年金の内容や、企業が対応すべき事務について説明します。

 

確定拠出年金とは?

確定拠出年金とは、公的年金に上乗せして給付を受ける私的年金の一つで、拠出された掛金が個人ごとに明確に区分され、掛金とその運用収益との合計額をもとに将来の年金給付額が決定されるという年金制度です。

確定拠出年金には、企業が実施する「企業型確定拠出年金」と、個人が実施する「個人型確定拠出年金(iDeCo)」があります。今回の制度改正は、これまで自営業者等のみに限定されていた個人型確定拠出年金の加入者の範囲が拡大し、基本的に60歳未満のすべての人が個人型確定拠出年金に加入できるようになるというもので、2017年1月から施行されます。これにより、加入者の老後の資産形成を促進し、より多くの人が豊かな老後生活を実現することが可能になると期待されています。

個人型確定拠出年金では、加入者が60歳になるまで掛金を拠出し、拠出した掛金の運用は、運営管理機関(金融機関)が提示する運用商品(預貯金、保険商品、投資信託、信託等)の中から加入者自らが選択して行います。そして60歳以降、加入期間等に応じて受給できる年齢が決定します。受け取ることのできる金額は、加入者それぞれの拠出額と運用成績によって変動します。

 

個人型確定拠出年金のメリット

個人型確定拠出年金のメリットは、加入者個人が運用の方法を決められることや、運用成績が好調であれば将来受け取ることのできる年金額が増えることなどがありますが、メリットの中でも特に魅力的なのが、各種の税制優遇措置を受けられることでしょう。

個人型確定拠出年金では、以下のような税制優遇措置を受けることができます。

 

(1)掛金が全額所得控除される

個人型確定拠出年金の掛金は、全額所得控除が受けられます。例えば、毎月2万円ずつ掛金を拠出した場合、税率が20%の人だと、1年間で4万8000円の節税効果が得られます。仮に35歳から60歳までの25年間を同様に拠出し続けた場合、25年間で総額120万円の節税となるのです。所得税を支払っている人にとって、掛金が全額所得控除されるというのは、とても嬉しい措置であるといえるでしょう。

 

(2)運用益も非課税で再投資される

通常の金融商品の場合、運用益に対して源泉分離課税(税率20.315%)という税金がかかりますが、個人型確定拠出年金については、この運用益に対する課税がありません。大きな利益を出せばその分課税されるその他の金融商品とは異なり、大きな利益を出せば出した分だけ自分にリターンが発生して次の運用に回すことができるため、これもかなり魅力的な措置であるといえるでしょう。

 

(3)受け取るときも税制優遇措置がある

個人型確定拠出年金の老齢給付金を「一時金」として受け取る場合は「退職所得控除」という控除が、「年金」として受け取る場合には「公的年金等控除」という大きな控除が受けられるため、所得税を節税することができます。

 

個人型確定拠出年金の留意点

個人型確定拠出年金には上記のようなメリットがある一方で、留意すべき点もあります。以下の3点については、特によく確認しておくことが重要です。

 

(1)運用は自己責任である点

個人型確定拠出年金の運用は加入者自身の責任で行われ、将来受け取ることのできる金額は運用成績によって変動します。加入者は、運営管理機関が提示する様々な運用商品の中から自ら商品を選択して運用を行いますが、中には元本保証のない商品もあります。それぞれの商品の特徴をよく理解したうえで、自らの運用方針にあった商品を選択することが重要です。

 

(2)中途引き出しに制限がある点

個人型確定拠出年金制度は、老後の資産形成を目的とした制度であるからこそ、税制優遇措置が設けられています。こうした制度の性質上、原則60歳になるまでは引き出すことができなくなっていますので、注意が必要です。掛金の額は原則として1年に1回変更することができるので、うまくやりくりをして、拠出額が現在の自分の生活を圧迫することのないように気を付けましょう。

 

(3)口座管理手数料等がかかる点

個人型確定拠出年金には、加入時の手数料や毎月の口座管理費といった各種手数料があります。様々な金融機関が運営管理機関になっており、運営管理機関によって手数料が異なりますので、事前に十分に確認をするようにしましょう。

個人型確定拠出年金に加入する際には、上記のような留意点もしっかり確認したうえで、加入の判断をすることが欠かせません。

 

企業はどんな対応が必要?

今回の制度改正により、基本的に60歳未満のすべての人が個人型確定拠出年金に加入できることになりました。従業員が個人型確定拠出年金に加入する場合、企業は以下の対応を行うことが必要となります。

 

(1)事業所登録

個人型確定拠出年金の加入者となる従業員を使用する事業所は、国民年金基金連合会に事業所登録をする必要があります。掛金の納付方法として、個人払込と事業主払込の人が両方いる場合には、それぞれについて事業所登録が必要ですので注意するようにしましょう。

 

(2)事業主証明書の記入

個人型確定拠出年金に加入を希望する従業員から提出される「事業主証明書」に、必要事項を記入する必要があります。

 

(3)事業主の証明

年に一回、国民年金基金連合会が加入者の勤務先に資格の有無の確認を行いますので、その際に事業主の証明が必要となります。

 

(4)掛金の納付

個人型確定拠出年金の加入者が掛金の事業主払込を希望する場合、事業主から国民年金基金連合会に対して毎月掛金を納付する必要があります。

 

(5)年末調整

個人型確定拠出年金には所得控除があるため、加入者が個人払込を選択した場合には年末調整が必要となります。さらに、すでに企業型確定拠出年金を実施している企業で、それに追加して個人型確定拠出年金を実施する場合、企業型確定拠出年金規約を変更し、個人型にも同時に加入できる旨を規約に規定する必要があります。

ただし、すでに企業型確定拠出年金規約においてマッチング拠出(企業の拠出する掛金に、個人で掛金を上乗せして拠出する方法)を行っている場合には、個人型への加入を併用することができません。この場合、企業としてマッチング拠出か個人型確定拠出年金の加入かのどちらかを選択する必要がありますので、注意が必要です。

 

 

まとめ

今回の制度改正は、基本的にすべての人を個人型確定拠出年金の加入対象とすることで、より多くの人の老後の資産形成を促進することを目的としています。制度についてよく理解したうえで、従業員やその配偶者に向けて制度の普及推進に向けた周知を図るようにしましょう。

また、従業員が個人型確定拠出年金に加入する場合、企業が対応すべき事務がいくつかありますので、しっかりと対応をするようにしましょう。

こちらも読まれています:

この記事が気に入ったら いいね!しよう
somu-lierから最新の情報をお届けします

この記事に関連する記事