数年前に流行語として一世を風靡し、今でも何かと話題になることの多い「ブラック企業」や「ホワイト企業」。仕事を探す人々にとって、どの企業がブラック企業かホワイト企業かは、とても大事なポイントです。
実は、国がホワイト企業を認定する制度があるということを、ご存知でしたか? 厚生労働省は2015年から、労働者の安全や健康を確保するための対策に積極的に取り組んでいる企業を「安全衛生優良企業」として認定する制度を実施しています(通称・Wマーク)。
今回は、厚生労働省から委託を受けてWマーク(安全衛生優良企業公表制度)の普及推進を行っている、非営利一般社団法人安全衛生優良企業マーク推進機構(以下、機構)の木村誠理事長にお話を伺いました。
目次
活動を始めたきっかけ
―木村さんはWマークを普及推進する活動をされていますが、活動を始めたきっかけは?
自分が新卒で入社した頃と比べて、現代では働き方が変わってきているということに問題意識を持っていました。ブラック企業と呼ばれる企業が散見し、殺伐とした雰囲気の企業も増えてきています。それをどうにかしたいと思っていたところで、Wマークの存在を知りました。
社会起業家として社会の課題を解決し、社会貢献をしたいとの思いから、非営利型の一般社団法人である機構を立ち上げ、現在は厚生労働省から委託を受けてWマークの普及推進を行っています。
Wマーク(安全衛生優良企業公表制度)とは?
―そもそもWマークとは、どのようなものですか?
Wマークとは、厚生労働省が実施する「安全衛生優良企業公表制度」において、安全衛生優良企業と認定された企業に付与されるマークです。
安全衛生優良企業公表制度は2015年6月から始まった制度で、労働者の安全や健康を確保するための対策に積極的に取り組み、高い安全衛生水準を維持・改善している企業を、厚生労働省が安全衛生優良企業として認定します。
この認定を受けるためには、過去3年間労働安全衛生関連の重大な法令違反がないことなどの基本的な事項に加えて、労働者の健康保持増進対策やメンタルヘルス対策、過重労働対策、安全管理など、幅広い分野で積極的な取組を行っていることが必要です。
基準を満たした企業は3年間の認定を受けることができ、さまざまなメリットを得ることができます。
Wマーク取得のメリット
―Wマークを取得すると、企業にとってどのようなメリットがありますか?
安全衛生優良企業に認定されると、厚生労働省のホームページで企業名が公表されます。また、名刺や企業パンフレット等でWマークを使用することができるようになり、様々な場面でPRすることができます。それにより企業イメージが向上し、採用や取引にとても有利になります。
Wマークの制度は去年から始まったものですが、就活生からの関心は高まっており、中には学生から「御社はWマークを取得していますか?」と質問された企業もあるようです。
最近の就活生は、どこがホワイト企業であるかということをとても気にしているので、Wマークを取得している、すなわち国からホワイト企業であるというお墨付きをもらっているということは、企業にとって非常に大きなアピールポイントとなります。
Wマークの普及推進のために、どのような活動をしている?
―Wマークの普及推進のために、どのような活動をされていますか?
Wマークはまだまだ一般に認知度が低いという現状があり、現在は厚生労働省と連携しながらセミナー等を開催しています。
セミナーを行うと、最初はほとんどの企業がWマークを知らないという状況から始まります。しかし、セミナー終了後には「詳細を聞きたい」という声をいただくことが多く、企業からの反響の大きさがうかがえます。
また、Wマーク取得を希望する企業に向けて、Wマークの認定支援の活動も行っています。Wマークの取得申請にあたっては膨大な資料が必要となりますが、機構では社労士や労働安全衛生コンサルタント等の専門家集団を構成し、資料の精査を行うなど申請のサポートをしています。
Wマーク、やっぱり取った方がいいの?
―Wマークの取得はとても大変そうですが、それでもやはりWマークは取った方がいいのでしょうか?
Wマークは他のマークと違ってハードルが高く、簡単に取れるものではありません。取得にあたっては、それなりの覚悟が必要となるでしょう。しかし、Wマークは取得すること自体に意味がある制度であり、挑戦する価値はあるといえます。
また、Wマークを始めとした労働環境改善の動きは、流行り廃りで終わるものではないということが確実です。最近ではインセンティブ型、すなわち頑張った企業が頑張った分だけ得をするというシステムの制度が増えてきていて、今後もこの流れは続いていくでしょうから、Wマークのインセンティブは今後ますます充実していくことが予想されます。
さらに、Wマークを取得したからには、ぜひメリットを享受してほしいと思っています。機構では、Wマーク取得企業のみで実施する就活イベントを開催するなど、Wマーク取得後に活用できる様々なメニューを提供しています。
企業においてはWマークを採用に役立ててほしいという思いがあるので、特に中小企業のみなさまには、ぜひ積極的に挑戦してほしいです。
今後のビジョン
―今後のビジョンをお聞かせください。
働いている人のうちの1%の人が、Wマークの下で働くことを目指しています。就業者数は約6500万人なので、65万人ほどですね。
また、どこがブラック企業かホワイト企業かが分からず就活が安心してできないという現状を変えたいと思っています。そのために、ホワイト企業などをリスト化した労働環境データベースを構築し、就活生に示してあげることを最終的な目標にしています。
編集後記
ブラック企業が社会問題となっている昨今、ブラック企業に対する社会の目はとても厳しいものとなっています。また、「働き方改革」は現在の政府の最重要課題であり、企業にとって、労働環境改善の必要性は今後急激に高まってくることが予想されます。
このような状況のなか、国からホワイト企業であるというお墨付きを得ることのメリットは非常に大きく、Wマーク取得は全社を挙げて取り組むべき課題であるといえるでしょう。
厚生労働省のホームページでは、Wマーク認定の基準を満たしているかどうかの自己診断ができるようになっています。Wマーク取得に興味がある場合は、まずは自己診断サイトで自社の安全衛生の取組レベルについて自己診断を行ってみるとよいでしょう。
また、10月には厚生労働省主催のセミナーや、somu-lierでもWマークの概要や取得のために必要な過重労働対策・ストレスチェック制度対策についてのセミナーを開催していますのでぜひご参加ください。