アカウンタビリティとは、経営者が利害関係者に対して経営や財務の状況を報告する義務を指します。アカウンタビリティが確立されている組織は透明性が高く、信頼される存在になるため、利害関係者との関係性構築につながります。一方アカウンタビリティが不十分だと、法令違反リスクや社会的信用度の低下リスクなどが生じます。今回は、アカウンタビリティの重要性や、果たさないことによるリスクなどについて解説します。
目次
アカウンタビリティを果たそう
アカウンタビリティとは
アカウンタビリティとはアカウント(会計)とレスポンシビリティ(責任)の2つに由来する言葉で、経営や財務などの状態を利害関係者に報告する義務のことです。より具体的には経営者は利害関係者の情報格差を埋めるために、財務諸表などの会計情報を開示して説明する必要があります。なお、現在ではアカウンタビリティの説明責任という側面の認識の高まりもあり、ビジネス・教育・政治などの幅広い分野で使用される場面が増えました。
レスポンシビリティとの違い
レスポンシビリティは「実行責任」を示しており、プロジェクトを実行するメンバーなど複数人が共同で負う責任のことです。例えば、プロジェクトのメンバーが調査や集計作業をミスなく正確に実施する行為はレスポンシビリティに該当します。一方、アカウンタビリティは「成果責任」と言い換えられ、責任を負うのはプロジェクトリーダーです。プロジェクトリーダーは結果を報告して、成果が不十分であればその責任を負います。
アカウンタビリティが重要視される背景
アカウンタビリティが重要視される背景として挙げられるのが、SDGsに対する意識の高まりです。SDGsとは持続可能な開発のための国際目標であり、企業も重要な役割を担っています。投資家も単に業績向上だけで評価するのではなく、環境や雇用などの社会問題を改善できる企業を求めるようになりました。そうした際に企業の具体的な活動を見極めるためにも、アカウンタビリティが着目されるようになったのです。
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アカウンタビリティの重要性
社会的責任を果たせる
アカウンタビリティの重要性としては、社会的責任を果たせることが挙げられます。アカウンタビリティは株主に対して経営状態を適切に説明するだけではありません。環境問題への取り組みや地域社会への貢献などについても含まれます。こうした価値観をアピールできれば、企業は社会からの信頼を得ることが可能です。
利害関係者との関係性を構築できる
アカウンタビリティによる情報開示は、利害関係者との関係性を構築するために欠かせません。そもそも、利害関係者とは企業経営におけるステークホルダーのことで、株主・従業員・顧客・取引先企業などが該当します。近年は企業の不祥事が数多く報道されている影響もあり、こうした利害関係者は透明性のある経営情報を求めるようになりました。そこで、公平で透明性の高い情報を発信して利害関係者に安心感を与えられれば、企業への信頼感を高められます。
従業員のモチベーションが向上する
社外だけでなく社内へアカウンタビリティを示せれば、従業員のモチベーションを向上させられます。社内に向けて透明性を担保した情報を開示できれば、企業のビジョンや考え方を従業員まで浸透させることが可能です。従業員に日々の業務の役割や意味を改めて認識してもらえれば、仕事への取り組み方も変化します。従業員のモチベーションが向上すれば、企業の生産性向上にもつながるはずです。
アカウンタビリティが不十分な場合のリスク
法令違反のリスクが高まる
企業のアカウンタビリティに問題があると、法令違反のリスクが高くなるので注意しましょう。例えば、会社法において株式会社は「定時株主総会の承認後遅滞なく、貸借対照表を公告しなければならない」と定められています。また、金融商品取引法は上場企業や一部非上場企業に対してルールを定めており、原則として有価証券報告書や監査証明を受けた財務諸表を提出しなくてはなりません。こうした法令で定められた情報を企業は発信しないと、開示義務違反とみなされる可能性があります。
資金調達で問題が生じる
アカウンタビリティが十分に果たされていないと、資金調達で問題が生じる可能性があります。資金調達を実施するには出資者からの信用を獲得しなければなりません。出資者は企業が開示している情報から判断して投資を判断します。そのため、開示情報に透明性や納得感がなければ投資は実施されません。この資金調達への影響は上場している企業だけでなく、事業の拡大を考えるベンチャー企業にとっても重要な考え方です。
社会的信用度が低下する
アカウンタビリティが不十分だと、社会的信用度が低下する恐れがあります。もし、企業の問題が発覚しても適切な説明がないままだと、情報の真偽や今後の方針を厳しく追及されるでしょう。特に、昨今はSNSで拡散スピードが高まっているだけでなく、虚偽の情報が広まるリスクも増えています。そうした際に企業による公式の見解が発信されなければ社会的信用度が低下してしまうだけでなく、憶測による誤った情報が広まってしまう恐れもあるのです。
まとめ
アカウンタビリティは企業が社会的責任を果たすためだけでなく、利害関係者と良好な関係を構築するためにも重要な要素です。もし、開示される情報に問題がある状態だと、企業に対して不信感を抱きかねません。企業から率先して透明性を担保した情報を発信できれば、社内外からの信頼を獲得できます。企業の情報発信について疑問を感じていたら、アカウンタビリティについて改めて考えてみてはいかがでしょうか。