【シリーズ】就業規則の隠れた意味4:正しく知らないと人件費の増大に。労働法上の「休日」とは?

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公開日:2016.5.20

【シリーズ】就業規則の隠れた意味4:正しく知らないと人件費の増大に。労働法上の「休日」とは?

本シリーズは、「意外と知られていない就業規則の隠れた役割」について、労働法の観点から解説する連載企画です。今回は、労働法上の休日の取り扱いに関するルールをテーマに取り上げます。

労働基準法で定められた2つの「休日」を知っておこう

休日については、労働基準法35条1項において「毎週少なくとも一回の休日を与えなければならない。」と定められており、週休1日制が原則です。例外的に、4週間を通じて4日以上の休日を与えるという変形休日制を採ることも認められています(同条2項)。このような労働基準法で定められた休日を「法定休日」といいます。

もっとも、法定休日を確保していれば、休日の日数は使用者が自由に決めることができます。実際に多くの企業が、雇用契約や就業規則等で定めることにより、週休2日制を取り入れています。このような、雇用契約や就業規則で定める休日のことを「所定休日」といいます。

この「法定休日」と「所定休日」の2つが労働法上で定められている「休日」です。

◇多くの会社が週休2日制を採用しているのはなぜ?◇

労働基準法は、一日8時間、一週40時間(この限度の時間数を「法定労働時間」といいます)を超える労働を原則禁止し(32条1項、2項)、これを超える時間労働させるためには、労使協定(いわゆる36協定)を締結した上で、割増賃金を支払わなければならないと定めています(36条1項、37条1項)。

1日の労働時間を就業規則で8時間と設定した場合(このように就業規則雇用契約書で定めた労働時間を「所定労働時間」といいます)5日間働けば週40時間働いたことになるため、週休1日制を採ると、6日目は法定労働時間を超える労働として、割増賃金を支払わなければなりません。このような事情から、所定労働時間を1週40時間という法定労働時間内に収めるために、週休2日制を採用している会社が多いのです。

 

「休日」の種類で割増賃金率が異なる点に注意!

社員が会社の定める所定休日に勤務した場合、通常は、割増賃金を支払う必要があります。この場合の割増賃金率は、以下のとおり、法定休日と法定休日以外の所定休日(法定外休日)で異なります。

割増賃金を支払う必要がある「休日」割増賃金率
法定休日35%
法定外休日 (ただし法定労働時間を超える場合のみ)25%
法定外休日 (1ヶ月60時間を超える時間外労働をした場合)50%

※2016年4月現在、中小企業については50%への引き上げは猶予されていますが、次の法改正で猶予が撤廃される見通しです。

社員にとっては、会社の「休日」に勤務したという意味で法定休日でも法定外休日でも変わりませんが、法律上は割増賃金の発生の有無や割増賃金率が変わってくるため、労働管理や給与の際算上はきちんと分けて把握することが重要になります。

 

人件費を抑える就業規則の定め方とは

使用者は休日に関する事項を、従業員に明示する義務があり、就業規則にも記載しなければなりません。(労働基準法15条、同法89条1号)。

では、どこまで記載すれば明示義務を果たしたことになるのでしょうか。法律上は、「休日に関する事項」と規定するのみで、法定休日の曜日や日付の特定まで義務付けられていません。通達では、具体的に休日を特定するよう指導すべき、とされてはいるものの(昭和23.5.5基発682号、昭和63.3.14基発150号)法律上の義務ではないのです。

もちろん社員にとっては、休日を特定してほしいと思うのが通常です。一方で、上記のように法定休日と法定外休日では、割増賃金の発生の有無や割増賃金率が異なります。そのため、法定休日を曜日で固定してしまうと、割増賃金が予想外に多く発生してしまう事態が生じ得るのです。

例えば、日曜日を法定休日として定めた場合のことを考えてみましょう。土曜日に出勤する社員が多ければ、割増賃金が発生するとしてもそのほとんどが25%で済みます。しかし、日曜日に出勤する社員が多い場合は、ほとんどが35%の割増賃金ということになってしまい、人件費の増大につながってしまいます。

人件費の増大を防ぐためには、下記のように、法定休日を固定化しない形で就業規則を定める方法が考えられます。

第XX条 (休日)

  1. 休日は、次のとおりとする。
    (1)毎週土曜日及び日曜日
    (2)国民の祝日に関する法律に定められた休日(日曜日と重なったときは翌日)
    (3)年末年始(12月30日〜1月3日)
    (4)その他会社が指定する日
  2. 前項の休日のうち、法定休日を上回る日は所定休日とする。
  3. 毎週の休日のうち、休日労働のない最後の日又はすべての休日を労働した場合の最初の労働をした日を法定休日とする。

1の(1)のように規定することで、土日のうちのどちらかのみ勤務した場合には、勤務していない方の日が法定休日となるので、基本的には割増賃金25%で済むことになります。

なお、一週間の起算日は、特に定めなければ日曜始まりとされます。土日両方勤務した場合、上記のように「最初の労働をした日」とすると、日曜日が法定休日となります。

 

まとめ

以上のように、就業規則の定め方を工夫することで、休日勤務による人件費の増大を抑えることができるのです。ただし、このような定め方をする場合には、給与計算時に注意してください。機械的に日曜日を35%と設定するのではなく、各週の勤務状況をきちんと確認する必要があります。

このような点を踏まえつつ、就業規則をうまく活用していきましょうね。

※当記事の情報は、2016年4月28日時点のものです。

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