新型コロナウイルスの影響が原因となり経営が困難になった企業に対し、信用保証や融資、納税猶予を行う施策が発表されています。今後、こうした政府からのサポートが必要になった際は、最新の情報を基に、対象となる要件を満たしているかを確認しましょう。また、これらの制度を利用した事業主の方は、多くの制度で遡及適用が可能であることにも留意しましょう。今回は、新型コロナウイルスの影響で政府が発表した、信用保証・融資・税制に関する特別措置の内容や要件、対象について解説していきます。
信用保証に関する特別措置
2020年4月9日現在、政府が発表している信用保証の特別措置は3種類です。それぞれ適用対象や概要、保証する内容が異なります。なお、信用保証の特別措置は一般保証とは別枠になるので、同時利用が可能です。
セーフティネット保証4号
新型コロナウイルス感染症により経営に影響が出ている中小企業や小規模事業者に対して、一般保証(最大2億8,000万円)とは別枠の保証を行う資金繰り支援制度です。セーフティネット4号では、信用保証協会が融資額100%の保証を行います。セーフティネット保証4号を利用するには、事業所所在地の市町村長の認定、および信用保証協会と金融機関の審査を受けなければなりません。
- 対象
47都道府県の、新型コロナウイルス感染症で経営に影響が出ている中小企業や小規模事業者 - 利用要件
- 1年以上継続して事業を行っている
- 最近1ヶ月の売上高が、前年同月と比べて20%以上減少している
- 2の条件を満たしたうえで、その後の2ヶ月を含む3ヶ月間の売上高が、前年同期に比べて20%以上減少すると見込まれる
- 新型コロナウイルス感染症の影響で経営が悪化しており、業歴が3ヶ月以上1年1ヶ月未満の事業主
- 前年以降の店舗増加などで、前年売上高との比較が難しい事業主
要件の4と5は、2020年3月13日に発表された「新型コロナウイルス感染症に係る認定基準の運用緩和について」で新たに追加された要件です。これらが追加されたことで、前年の実績がない事業主や、前年以降に店舗や業務拡大を行った事業主もセーフティネット保証4号の対象に含まれるようになりました。
- 内容
経営を安定させるための資金を100%保証します。保証上限額は2億8,000万円です。セーフティネット保証4号と一般保証は別の枠になるので、併用した場合、最高で5億6,000万円の保証を受けることができます。
セーフティネット保証5号
新型コロナウイルス感染症で特に重大な影響を受けている業種の中小企業や小規模事業者に対して、一般保証とは別枠で80%の保証を行う制度がセーフティネット5号です。
- 対象
経済産業省が指定した587業種(2020年4月1日から6月30日まで) - 利用要件
- 指定業種に属する事業を行っている
- 最近3ヶ月の売上高が、前年同期と比較して5%以上減少している
- 2月以降の直近3ヶ月の売上高が算出できるようになるまでは、直近の売上高の減少と売上高見込みを含む3ヶ月間の売上高の減少が、前年同期と比較して5%以上減少している場合も対象とする(一時的な運用緩和)
- 製品などの原価の20%以上を占める原油などの仕入れ価格が20%以上上昇しているにもかかわらず、製品などの価格に転嫁できていない中小企業者や小規模事業者
- 内容
経営を安定させるための資金を80%保証します。セーフティネット保証5号とセーフティネット保証4号は同じ保証枠になるため、セーフティネット保証4号と5号を合わせて最大2億8,000万円が保証上限額となります。
危機関係保証
危機関係保証は、売上高が急減する中小企業や小規模事業者に対して、経済産業省が発動した保証制度です。東日本大震災やリーマン・ショックなどの危機が起こった際に適用するために作られた保証で、今回の発動が初めての実施となります。
- 対象
全国の保証対象業種全種 - 利用要件
- 新型コロナウイルス感染症の影響で、原則、最近1ヶ月間の売上高が前年同月と比較して15%以上減少している
- その後の2ヶ月を含む3ヶ月間の売上高が、前年同期と比較して15%以上減少することが見込まれる
- 内容
経営を安定させるための資金を100%保証します。保険上限額は2億8,000万円です。一般保証やセーフティネット保証と併用することができるので、最大で8億4,000万円の保証を受けることができます。
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融資による支援
新型コロナウイルス感染症特別貸付と特別利子補給制度を併用することで、実質的に無利子で融資を受けることができます。最初から利子を払わなくても良いというものではなく、一旦支払った利子が後で戻ってくるというということになります。
新型コロナウイルス感染症特別貸付
新型コロナウイルス感染症特別貸付は、日本政策金融公庫による中小企業者向けの融資です。
- 対象
新型コロナウイルス感染症の影響で、一時的に業績が悪化していても、中長期的には業績が回復し発展が見込まれる中小企業者 - 利用要件
最近1ヶ月の売上高が、前年、または前々年同期と比較して5%以上減少していることが要件です。業歴が3ヶ月以上1年1ヶ月未満の中小企業の場合は、最近1ヶ月の売上高が以下のいずれかと比較して5%以上減少していることが要件となります。 - 最近1ヶ月を含む過去3ヶ月の平均売上高
- 2019年12月の売上高
- 2019年10月から12月の平均売上高
- 内容
新型コロナウイルス感染症の影響を受けて必要になった、設備資金や長期運転資金を融資します。信用力や担保にかかわらず一律金利とし、融資後3年間まで0.9%の金利引き下げを実施します。据置期間は最長5年です。
特別利子補給制度
特別利子補給制度は、新型コロナウイルス感染症関係の融資制度を利用して借入を行った中小企業者に対し、利子補給を行う制度です。
- 対象
新型コロナウイルス感染症関係の融資制度を利用した中小企業者のうち、売上高が急減した事業者 - 利用要件
- 事業性のあるフリーランスを含んだ個人事業者(小規模のもの)
- 売上高が15%以上減少している小規模事業者(法人事業者)
- 売上高が20%以上減少している中小企業者
- 内容
新型コロナウイルス感染症特別貸付などを利用して融資を受けた際の利子を、3年間補給します。新規融資と2020年1月29日以降に日本政策金融公庫などから借入した額の合計が、利子の補給対象になります。
納税に関する特例
2020年4月7日に、政府は「納税を猶予する特例制度」を発表しました。
- 対象
新型コロナウイルス感染症の影響を受け、売上が減少したすべての事業者 - 利用要件
以下の要件を両方とも満たす必要があります。 - 新型コロナウイルス感染症の影響で、2020年2月以降の任意の期間(1ヶ月以上)の収入が、前年同期と比較して概ね20%以上減少している
- 一度に納税を行うことが困難
- 猶予の対象になる税
2020年2月1日から2021年1月31日までに納期限が来る所得税や法人税、消費税など、ほぼすべての税が対象になります。納期限が過ぎている未納の税についても、この特例を利用できます。 - 内容
納税を猶予する特例制度を利用すると、1年間、税金の納付を猶予してもらうことができます。担保の提出は不要で、延滞税も免除となります。
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まとめ
新型コロナウイルス感染症により、多くの中小企業の経営に影響が出ています。閉店を余儀なくされたり、売上が0になってしまったりといった企業も少なくありません。しかし、支援があればなんとか頑張れるという企業も多いでしょう。今回ご紹介した政府の支援制度をうまく利用し、新型コロナウイルス感染症を乗り切りましょう。