2019年10月4日~10月24日に行われた「総務の森×オフィスのミカタ×somu-lier」コラボアンケートでは、全国のバックオフィス従事者324人にテレワークについてのアンケートを実施しました。
テレワークは、自宅利用型テレワーク(在宅勤務)、モバイルワーク、施設利用型テレワーク(サテライトオフィス勤務)の3つに大別され、働き方改革の柱のひとつとして国を挙げて推奨されている取り組みです。今回は、さまざまなアンケート項目についての集計結果を元に、最新のテレワーク事情をお伝えします。
目次
回答者の属性
回答者の会社規模
回答者の立場
回答者の男女比
回答者のエリア
首都圏(東京・千葉・埼玉・神奈川)が約65%を占めており、首都圏中心型の回答者構成となっています。
テレワークの現状について
アンケート集計結果によると、「テスト運用」「対応中」を含めて、34%の企業がテレワークをすでに実施しているとのことでした。これに「検討中」「検討したい」の企業を含めると、約70%の企業がテレワークの必要性を感じ、前向きな対応をしていると言えます。
その一方で、導入予定のない企業が約30%もあることもわかりました。
では、テレワークを導入していない理由は何なのでしょうか?
テレワーク導入の有無
テレワークを導入しない理由として最も多く挙げられた回答が「環境が整っていない」、次いで多かったのが「経営層の方針に挙がっていない」でした。
アンケートでは、テレワークを導入していない企業の回答者から、以下のような、現在直面している具体的な回答をいただきました。
- 勤務状況の管理ができないことが懸念され、導入検討までいかないのが実情
- 出社している社員との業務のバランスが保てるか疑問。業務の整理が優先
- 業務における勤務実態が見えないため、相当の信頼がないと導入は困難
- テレワークを利用する文化形成が難しい。上層部の考えが変わらないと厳しい状況
- テレワークに関して、役員・社員それぞれの認識にズレがある
テレワークを導入していない理由
テレワーク未導入の企業が、今後導入に向けて前進していくためには、環境整備と企業全体の意識改革を進めていくことが鍵となりそうです。
テレワーク未導入企業が抱える課題
環境面
- セキュリティの確保
- テレワークに対応した社内規定の整備
- 勤怠管理、評価制度などの社内インフラの整備
- 対象業務が絞られることへの対応
- 導入、運用プロセスについての理解
- 導入、運用に伴う費用創出と人員の確保
意識面
- 経営層のテレワークへの理解
- 管理職のテレワークへの理解
- 従業員の意識改革
テレワーク導入の最大の目的
テレワークの最大目的で最も多かったのが「社員の家庭事情や個人体調の都合での利用」の58%で、「自然災害などがあった時のために(BCP))」の20%、「社員モチベーション向上」の15%を大きく上回りました。
BCP(事業継続計画)の観点から語られるケースも多いテレワークですが、アンケート結果からは、ダイバーシティ寄りの施策ととらえている方が多いことがわかります。また、具体的なご意見から、パフォーマンス向上よりも、育児や介護など何らかの事情からフルタイムで働けない人のための救済措置として、テレワークの導入・検討に進む企業が多いことが伺え、「経営戦略としてのテレワーク」に対して今一つ確信が持ててない現状が浮かび上がってきます。
会社規模別のテレワークの実施状況
従業員1,000人以上の大規模企業と49人未満の小規模企業では、「導入していないが検討したい」がともにゼロという結果でした。しかしながら、その内実には違いがありそうです。
総務省の調査※でも「テレワークへの取り組みは従業員規模の大きい企業ほど進んでいる傾向がある」とされており、大規模企業の場合は、テレワークに対して全く未着手という企業はほとんどないと考えられます。したがって、すでに一通りの検討を終えた結果の「ゼロ」ではないでしょうか。
一方、小規模企業は、そのキャパゆえに「検討の余地(発想)がない」という可能性が高そうです。実際に、小規模企業の方からの意見では、「コスト、セキュリティ、インフラなどの面でハードルが高い」「テレワークに関して理解ができていない」といった内容が目立ち、企業規模によって取り組み姿勢の差が大きく分かれている現状が垣間見えています。
※総務省「ICT利活用と社会的課題解決に関する調査研究」(平成29年)
非常事態時の取り決めとテレワーク
天災時の出社に関する取り決めの有無
天災時の出社に関する通知
会社から指示される内容
「非常事態時の取り決め」についてのアンケート結果を見ると、天災時の出社に関する取り決めについては64%の企業が定めているものの、非常事態時のためにテレワークを導入している企業はごくわずかであることが判明しました。
テレワークは非常事態時において、大変有効な手法です。天災時などで出社が困難な状況が起きても、出社をやめ、テレワークでの作業へと切り替えることで、事業をスムーズに継続できる可能性が高まります。さらには、従業員の安全確保に寄与できることもメリットのひとつ。近年は異常気象による交通網の乱れが増加傾向にあり、「従業員を守るための在宅勤務」という名目であれば、検討しやすくなる企業も多くなるのではないでしょうか。
2020年東京オリンピック時 テレワーク実施の有無
2020年7月24日に開幕する東京オリンピック。この一大イベントに際して、テレワーク実施を進めている企業は、「実施する予定」「検討中」を合わせて42%と、約半数に及びました。
首都圏企業(東京・神奈川・千葉・埼玉)における
2020年東京オリンピック時 テレワーク実施の有無
会場となる首都圏所在の企業(東京・神奈川・千葉・埼玉182社)に絞った集計結果では、現状、テレワーク実施予定の企業は14%にあたる26社にとどまっており、約40%にあたる74社の企業が検討中と回答しています。オリンピック開催1年を切った時点で、対応を決めかねている企業が多いことが伺えます。
大会期間中は、都内を中心に道路・鉄道が非常に混雑することが予想されますが、テレワークの導入は、従業員の通勤負担軽減と混雑緩和の両面に確実に貢献できます。テレワークについて、試された企業も、一部導入した企業も、検討中の企業も、オリンピックを契機に「本格的な一斉実施」のトライアルを行い、継続活用してくための情報収集と経験を得てみてはいかがでしょうか。
まとめ
テレワークのメリットは、事業継続性の確保、生産性向上、オフィスコストの削減といった経営面への効果はもちろん、ワーク・ライフバランスの効果によって働きやすい環境づくりが進むことで、採用競争率の強化、優秀な人材の確保にもつながっていきます。
導入にあたっては、ルールづくりや勤務環境やセキュリティの整備など、多くの準備が必要ですが、厚生労働省が公開しているテレワーク導入の手順などを参考に、テレワークについての理解を深め、まずはトライアルではじめてみましょう。